現場の業務システムとの融合を促進
――現場に焦点を当てた製品が増えてくると、販売チャネルについても従来とは違ったかたちになるのでしょうか。
耐久性を持たせて、小型化し、それでいて性能も向上させるとなると当然コストが膨らみます。一般オフィスにまとまった数を納入するタイプの販売パートナーから見れば、「もっと安く、数が売れるものにしてくれ」となってしまいます。ところが、現場に特化したプリンタであれば、システム全体を設計、構築する上で最適なデバイスとして選んでもらえる可能性が高い。
今年9月に販売を始めた幅狭カラーラベルプリンタ「PLAVI(プラビ) Pro330S」は、SIerのシステム構築のデバイスとして組み込んでもらうことを想定しています。例えば、小売店舗の棚に陳列してある商品のバーコードを読み取り、商品名や価格を値札に印刷するシステムの出力デバイスとして採用していただいています。いくらペーパーレスが進んだといっても、値札や入場券、クーポン券、会員証、記念カードなどは紙で印刷したほうが分かりやすいといったケースはたくさんあります。
プリンタのソフトウェアの書き換えといったカスタマイズが必要であれば、業種や業務に精通したSIerやソフト開発会社との協業を通じて、当社としても積極的に協力していきます。現場や業務に特化したプリント需要をビジネスパートナーと力を合わせて開拓していきたいと考えています。
――現場に特化したプリンタ市場だけでは、規模の拡大が見込めないようにも思います。
プリンタ市場の拡大期であれば、規模の追求という選択もありだと思います。ただ、市場が成熟しつつある中では、自社の強みを生かす方向へ舵を切ることが勝ち残る条件だと考えています。沖データの事業拡大のきっかけはマック用のプリンタで、主に出版や広告などのDTP用途でした。当初から必ずしも一般事務用のプリンタではなかったのです。
沖電気工業本体は、キオスク端末やATM、各種の設計・製造受託サービスを手がけていますが、少なくない製品にプリント機能が実装されています。これらのデバイスの多くはユーザーの要望に沿ってカスタマイズしていく商材で、IoTとプリンタモジュールの融合市場とも言えます。今後、より柔軟なカスタマイズ性を発揮していくためにも、今回の沖電気工業との統合は自然の流れです。ユーザー企業の現場業務とより一層融合していくことで、他社には真似のできない独自のプリンタ市場を形成していく方針です。
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Goods
沖電気工業に入社したときに購入したスイス時計のタグ・ホイヤーを今でも大切に使っている。もともと「モノにはこだわらないタイプ」だと自認する森社長だが、30年余りも苦楽をともに過ごしていると愛着が湧くようだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
沖データの全てを知る男だからこそのリーダーシップ
沖データの森孝廣社長は、同社の設立と同時に沖電気工業から籍を移し、以来、四半世紀以上にわたってプリンタ事業を手がけてきた。森社長のキャリアは沖データの歴史そのものと言っても過言ではない。
沖データの業績を振り返ると、2005年頃をピークに売り上げが伸び悩む。プリンタ販売のけん引役となっていたパソコン市場が成熟し、プリンタの価格競争も激しさを増したからだ。生産規模が勝敗を分ける戦いとなっていく。
転機となったのは、16年に商品企画を兼務するようになったことだ。森社長はかねてから「沖データの強みを生かせる分野を手厚くすべき」と訴えており、自らユーザー企業の現場業務に役立つプリンタ開発を主導した。
設計や素材選びを徹底的に見直し、ユーザー企業の現場業務の要望を商品企画に反映。省スペースながら高性能を実現し、装置寿命も大幅に伸ばした。21年4月の沖電気工業との統合後は、「ユーザーの要望に寄り添うようなカスタマイズ能力を一段と高めていく」と話す。独立会社としての沖データは消滅しても、沖電気工業グループの強みを生かすプリンタづくりをさらに発展させたいと意気込む。
プロフィール
森 孝廣
(もり たかひろ)
1964年、神奈川県生まれ。88年、明治大学経営学部卒業。同年、沖電気工業入社。94年、沖データ国内営業第一部。2006年、国内営業本部パートナー統括営業部長。16年、商品事業本部副本部長兼オフィスプリント事業部長。17年、取締役商品事業本部副本部長兼オフィスプリント事業部長。19年、常務執行役員兼商品事業本部長。20年4月、代表取締役社長就任。
会社紹介
沖データの昨年度(2020年3月期)の連結売上高は976億円。従業員数は約4000人。21年4月1日付で親会社の沖電気工業に吸収合併される予定。競争力がある業務用ラベルプリンタや現場業務で使う耐久性能の高い機種を国内と欧州などで展開する一方、米国のプリンタ販売は年内で終了するなどの事業再編を進めている。