21年は回復の年
パートナービジネスを本格化
――20年は新型コロナウイルスの感染拡大が起こりました。ビジネスにはどのような影響が出ていますか。
顧客の意識が大きく変わったと捉えています。今まではデジタルと言いつつ、どちらかというと顧客とは運用がメインの話を多くしていました。しかし、コロナ禍で働き方を変えなければいけなくなったことで、社員にフォーカスした話が増えています。リモートでの働き方が多くなる中、企業は、デジタルをどううまく使っていくかということに半ば強制的に取り組まなければならなくなっており、ServiceNowが提供する企業のシステムを横断的に自動化できるデジタルワークフローの必要性がより高まっていると感じています。
――21年の事業展開の方向性についてはどのようにお考えですか。
ワクチンの管理プログラムが経済回復のキーになると思いますが、21年は回復の年になり、ServiceNowとしてはソフトウェアで構成された21世紀の新しい企業像を定義する最初の年になると考えています。成長を実現するために、国内では「浸透」と「開拓」の二つをキーワードに事業を展開していくつもりです。まず浸透については、すでに多くの顧客がいる通信・サービスプロバイダーと金融の各業界に深く入り、Platform of Platformsを実現していくつもりです。一方、製造業を含む他の業種については、新規開拓を進めていきます。
――ビジネスを拡大する上で、パートナーの存在は欠かせないと思いますが、パートナービジネスはどのような状況でしょうか。
19年にISV(独立系ソフトウェアベンダー)プログラムとサービスプロバイダープログラムを日本国内で開始し、これまでにパートナーエコシステムは拡大してきています。ISVプログラムについては、パートナーがNow Platform上でアプリを独自開発し、「ServiceNow Store」に続々と掲載しています。かつてはServiceNow Store内に1、2行分のアプリしかありませんでしたが、今は全面が埋まるほど増えています。
一方、サービスプロバイダープログラムについては、大手のパートナーがビジネスモデルを変えようとしています。具体的には、今までの運用というよりも、サービスの向上が求められており、新しいサービスの基盤をつくるといった動きが多くなっています。ほかには、パートナーが自社内でServiceNowの製品を使っていないとエンドユーザーに効果的に説明ができませんので、まずはパートナーが自社向けに導入するケースが増えています。そこで育った技術者などをメンバーとするServiceNowの専任組織をパートナーが自社内につくる流れも生まれています。これまでもパートナービジネスには力を入れてきましたが、デジタル戦略の準備は着々と進んでいるので、21年は人材育成やServiceNowのファンを増やす取り組みを本格化させていきます。あとは、人口が多い40、50代の人たちのデジタルリテラシーを向上させ、ServiceNowのエコシステムに加わってもらうような活動にも力を入れていくつもりです。
――今後の目標をお聞かせください。
企業としては、顧客の成功がまず重要になります。ただ、顧客だけが成功して、われわれが成功しないのでは意味がありません。社員やパートナーも含めて、ServiceNowのエコシステム全体で成功することが必要です。21年は、ServiceNow関連で働く意味をエコシステムに関わる全ての人に感じ取ってもらい、サクセスとは何なのかということをしっかりと定義していきたいと思っています。
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Goods
4人の子どもたちから父の日のプレゼントとしてもらった金属製のタンブラー。在宅勤務で毎日使っているといい、「軽くて洗いやすい上、今の季節は飲み物が冷めにくいので重宝している。黒基調のデザインも気に入っている」と話す。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「奇跡的なほどやりがいのある会社」
村瀬社長がServiceNow Japanのトップに就任したのは2016年1月。以来、多くの企業や組織のデジタル化に貢献してきた。最近は、働き方改革やコロナ禍でデジタル化の機運が上昇。同社の製品に対する引き合いが増す中、村瀬社長は「奇跡的なほどやりがいのある会社だ」と表現する。
グローバルの戦略上、日本は最優先カテゴリーに位置づけられているという。重点的に投資をする市場であるがゆえ、同社には高い目標が設定されているが、村瀬社長は「国内にホワイトスペースはいくらでもあり、これからまだまだいける」と自信を見せる。
米国本社の創業ビジョンは「企業で働く普通の人々の仕事の生産性を高めるクラウドベースのプラットフォームを構築する」。創業ビジョンが焦点を当てる「人」は、村瀬社長が経営者として最も大切にしていることでもある。「製品をつくるのも、サポートして拡販するのも、使うのも人。ServiceNowにかかわるすべての人にやりがいを感じてもらえるようにしたい」と意気込む。
プロフィール
村瀬将思
(むらせ まさし)
1971年3月、静岡県清水市(現静岡市)生まれ。法政大学工学部経営工学科卒。TKCやiGATE Global Solutionsを経て、2009年、日本ヒューレット・パッカードにHPソフトウェア・ソリューションズ統括本部プロフェッショナル・サービス事業本部本部長として入社。14年に同社HPソフトウェア事業統括執行役員に就任。16年1月から現職。
会社紹介
人にしかできない、付加価値の高い新しい仕事を創造することを目指して、IT、従業員、顧客向けサービス領域における業務の生産性を向上するデジタルワークフローを提供。創業以来、着実に売り上げを伸ばし、グローバルの総売上高は約43億米ドルを誇る。Fortune 500が選ぶ企業の80%を含み、世界で6900社の顧客をサポート、従業員数は1万3000人超。2013年に日本法人を設立し、国内展開を本格的に開始した。