ダイワボウ情報システム(DIS)は、大手ディストリビューターとして全国各地でビジネスを展開している。IT業界で課題となっている人手不足が現場レベルで顕在化する中、販売パートナーとの関係強化などを通じて、国内のIT活用やDXに向けた取り組みをさらに支援する方針だ。「近い将来、DIS単体で1兆円を超える売上高を実現する」と意気込む松本裕之社長に、今後の成長戦略などを聞いた。
(取材・文/齋藤秀平 写真/大星直輝)
積極的な販売活動ができるように
――直近のビジネスの状況を教えてください。
2022年度はサプライチェーンの混乱によるモノ不足が長く続き、商材の確保に必死でしたが、本年度は解消の方向に向かい、積極的な販売活動ができるようになっています。当社はPC市場で高いシェアを獲得しています。それに関して言うと、「Windows 11」を搭載したPCへの入れ替えが24年度以降に本格化すると予想しており、本年度は需要が底の状態になるとみていました。当初は苦戦を覚悟していましたが、インフレや円安に伴ってPCの平均単価が上昇したため、売り上げはかなり伸びました。業績については、見た目の数字はいい状況になっていますが、中身は決して安心できる内容になっていません。24年度からのPCの入れ替え需要に加え、25年度にはGIGAスクール構想で導入した端末の更新が控えていることから、これからかなり忙しくなると思っています。そういった点を踏まえ、本年度は次に向けた下準備をすることが大きな命題になりました。
――PC以外の商材についてはいかがでしょうか。
クラウドについては、ハイブリッドも選択肢に入れた導入提案を行っていますが、実績はまだ満足できる状況ではありません。一方、ビジネスに取り組む販売パートナーの数や、エンドユーザーの契約数はかなり増えてきています。SMB市場では、これから本格的な波がくると期待しているので、人材や技術面の能力向上などに積極的な投資を続けていきます。セキュリティに関しては、多くの引き合いをいただきましたが、多層的かつ複雑化の傾向があるため、導入企業の規模やIT環境、運用課題などに合わせて、適切な環境整備につながる提案ができるよう準備を進めています。
――エンドユーザーのIT投資が堅調に推移する中、ITビジネスにおける課題についてはどのようにみていますか。
何をやるにしても人手不足が大きな課題だと痛感しています。当社は近年、組織変更を行い、企業ブランディングを強化し、人材獲得に注力していますが、ジョブごとにマッチした人材を獲得するのは至難の業となっています。業務負担は過剰でないか、ハラスメントなどはないか、社員に寄り添う働き方は実現できているか、社員が成長できるフィールドは用意できているか、といった点を中心に、今まで以上に社員への投資は重要になります。10年前と比較すると、売上金額と出荷数量はいずれも約2倍となっていますが、人員は19%増にとどめて生産性向上を図ってきました。社員への投資に加えて、システムや働く環境への投資も今後の成長のかぎになるでしょう。
単純なモノ売りだけでは通用しない
――全国に94拠点の事業所を構え、地域に根ざしたビジネスを展開しています。世間で注目されているDXについては、どのような印象を持っていますか。
メーカーや各地の販売パートナーなど各方面から声が出ており、当社も実感していますが、国内全体で生産人口が不足しています。その課題への対応策として、省力化やDXに向けたIT投資が、製造系をはじめさまざまな業種で出てきていると実感しています。とはいえ、DXが実際に進んでいるのは、まだ大手企業や都市圏中心で、中小企業や都市圏以外の地域では、人材の不足もあって速やかに進んでいるとはいえません。ただ、全国に人を配置しているのは当社の強みであり、そうした体制を生かして各地域の販売パートナーを支援していくことは大きな役割だと考えています。
――中小企業や都市圏以外の地域のIT活用やDXを進めるために、具体的にどのようなことが重要になるとみていますか。
単純にモノを売るだけでは通用しない時代になっており、コンサルティングの力を高めていくことが重要だと認識しています。当社は、製品単発のビジネスにとどめず、サブスクリプション型にしたり、運用サービスなどのサポートも加味したりすることで持続的に収益を獲得し、販売パートナーがエンドユーザーとの関係性をより深められるような提案型商談にこだわっています。これをしっかりと定着させていくためには、当社が販売パートナーの経営方針やビジネスの状況をきちんと把握し、課題の解決を支えていく必要があり、コンサルの力が欠かせません。現在、社員への教育に力を入れており、今後はしっかりと教育した社員の各地域への配置を進めていきます。これは先ほど説明した下準備の一つの例になります。
――大手ディストリビューターの1社として、IT業界全体で取り組むべきことについてはどのように考えていますか。
インターネットなどでエンドユーザーがいろいろなことを自ら調べられるようになりました。しかし、製品の種類や情報量が多い中、販売元に詳細を確認せず、ユーザー自身で製品を選択・購入した結果、後になって機能やサポート面で不足点が見つかり、セキュリティインシデントなどの大きな問題につながることがあります。そのような場合、責任は販売元にあるとの判例を多く目にしており、当社の販売パートナーが苦境に立たされるケースも出てきています。リスクの軽減や収益性の確保を含めて、IT業界を守るためのガイドラインのような仕組みが必要だと感じています。各ITベンダーが市場で競争するのは当然ですが、ベンダーやパートナーの役割分担をしっかりと決めて、業界全体がもうかるようにしていくべきだと思っています。
付加価値の高い活動に時間を割く
――さらなる成長に向けて、今後はどのような領域に注力しますか。
HCI(ハイパーコンバージドインフラ)やクラウドプラットフォームなど、さまざまな選択肢を組み合わせたハイブリッドなIT基盤の整備を重点的なビジネスとして捉えています。より複雑になったIT環境に対するセキュリティ商材のポートフォリオ拡充や、導入・運用などのサービス化、それに伴う人材教育・資格の取得も全社を挙げて実施しています。販売パートナーとの関係については、共に成長できるように経営目線も踏まえたお付き合いをしていきたいです。既存の経営を支援することはもちろんですが、経営者が代替わりする販売パートナーがあるため、新たな経営者によるチャレンジをしっかりと応援していきます。また、将来に向けてスタートアップ企業の支援も選択肢として想定しています。
――これから見込まれる需要増への対応で、社員の意識醸成も必要になりそうです。
先ほど少し触れましたが、24、25年は忙しくなり、売上高は増加していくと想定しています。そうした中で、社員がそれに甘んじてしまわないよう、より付加価値の高い活動に時間を割くとともに、エンドユーザーの課題にどう対処するかを販売パートナーとしっかり協議するように全社に指示しています。また、人材ローテーションをしっかり行い、専門性の高い分野に優秀な人材を投入します。さらに、人事評価についても見直し、売上高だけでなく、販売パートナーにどのように寄り添ったかなどのプロセス面を評価できるような基準をつくっていきたいです。
――今後の目標をお願いします。
トップディストリビューターとして国内の市場をリードするとともに、「社員全員が活躍できる会社、働きがいのある会社」にしていきたいと思っています。24年度から新たな中期経営計画がスタートします。近い将来、DIS単体で1兆円を超える売上高を実現し、社員をはじめ各ステークホルダーにしっかり還元できるようにしたいと強く感じています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
DISの社訓の一つに「変化を楽しもう」がある。これは約20年前に自ら考案したと教えてくれた。
新卒で入社した頃に比べ、会社の規模は大きく成長した。背景には、市場の変化に沿ってビジネスを展開してきたことがあるとみる。だからこそ、社訓に込めた「強い者が勝つのではなく、外部環境の変化に対応した者が勝つ」との思いは強い。
社長に就任してから2024年4月で丸4年になる。DIS単体で1兆円を超える売上高の実現を「近い将来」の目標に掲げつつ、ゆくゆくは「ITで日本を支える会社になれたらうれしい」と展望する。
国内のIT市場は現在、各企業の旺盛な需要に支えられて大きく動いている。課題とチャンスが混在する中、自社の成長に加え、IT業界全体の発展も見据える。社長としてやることは山積しているが、今の状況は「めちゃくちゃ楽しい」と笑顔を見せた。
プロフィール
松本裕之
(まつもと ひろゆき)
1966年生まれ。大阪府出身。89年3月に大阪工業大学を卒業後、同年4月にダイワボウ情報システム入社。販売推進部長や首都圏営業本部長、東日本営業本部長などを経て、2015年4月に取締役販売推進本部長に就任。常務取締役経営戦略本部長兼西日本営業本部長を経て20年4月に代表取締役社長となり、経営戦略本部長を兼任。
会社紹介
【ダイワボウ情報システム(DIS)】1982年4月8日設立。全国に94拠点(2023年4月1日現在)の事業所を構え、PCや周辺機器、ソフトウェアの販売などを手掛ける。23年3月期の売上高は8199億3500万円。社員数は1679人で、DISグループの社員数は2073人(いずれも23年3月31日現在)。