Special Issue

週刊BCN 特別連載企画<第3回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は

2023/12/21 09:00

週刊BCN 2023年12月18日vol.1996掲載

 ダイワボウ情報システム(DIS)は、国内最大級のディストリビューターとして国内94カ所に拠点を置くことで地域に密着した支援体制を整え、約1万9000社の販売パートナーとともに全国のITビジネスを支えている。少子高齢化への対応などが国全体の課題となり、デジタル社会の実現が急務になる中、ITが果たす役割はこれまで以上に重要になっている。コロナ禍をきっかけにDXの機運が高まる中、各地域の企業などは、どのように動いているのだろうか。DISのエキスパートの声から、国内のIT利活用の実態を探る。

札幌エリア
大手小売業は積極姿勢 土地柄にちなんだシステムも

拠点エリア 北海道エリア
拠点データ 札幌支店
住所:北海道札幌市中央区北三条西4-1-1(日本生命札幌ビル4F)
電話番号:011-242-4236

 札幌市は、政令指定都市で、北海道では最大の都市です。観光地として大きく注目される一方、しっかりと整備された街並みと自然が融合した住みやすさも魅力になっています。一方、2021年の人口動態で人口が戦後初めて減少に転じているほか、経営者の高齢化が目立っており、ITの力を活用して活力を高めることが必要になっています。
 
東日本・広域営業本部 北海道・東北営業部
札幌支店 鈴木徹志 支店長

 まずは札幌市の産業について紹介します。市内には、家具・インテリア用品販売店やドラッグストアを全国に展開する企業が本社を構えており、小売り業が多いのが特徴です。特に大手企業は、顧客データを販売促進に活用したり、自社で決済サービスを開発したりとIT活用に積極的です。

 札幌市はソフトウェア開発会社が多く、各企業の技術力は比較的高いといえます。雪が多い土地のため、それに関連したシステムもあり、地元の技術商社は、前方の車や歩行者などをAIで識別して視界不良時の運転を支援するシステム提供しています。

 かつての「サッポロバレー」をはじめ、自治体や企業のITに対する意識は高いと感じています。22年には、AI人材の育成や関連企業の集積、企業間の協業などを目的とする「札幌AI道場」が札幌市内に開設。自治体が主導するスマートシティの実現に向けた動きもあり、IT活用の機運は高まっています。また、札幌市による補助金に加え、災害の少なさや人材確保の観点からIT企業の進出が目立っています。

 最近では、クラウドサービスの普及によって、遠隔で商談やサポートができるケースが出ています。地元のIT企業だけでなく、首都圏をはじめ北海道外のIT企業が札幌市の企業需要獲得に動いている様子がうかがえます。札幌市のIT産業をより盛り上げていくためには、課題となっている若年層の人口流出の食い止めに加え、最先端の技術に関する情報を提供するなどして、地元のIT企業のレベルアップにつなげていくことが重要になると考えています。
 
札幌市中心部にある長さ約1.5キロメートルの大通公園は、
さっぽろ雪まつりの会場になるなど、年間を通じてさまざまなイベントが開催されている。
都会にいながら豊かな自然が感じられる場所として、市民にとっては憩いの場となっている。

盛岡エリア
観光向けで活用進む 各地への広がりに期待

拠点エリア 東北エリア
拠点データ 盛岡支店
住所:岩手県盛岡市中央通2-2-5(甲南アセット盛岡ビル8F)
電話番号:019-651-8212

 岩手県は、国内では北海道に次ぐ面積を誇り、場所によってさまざまな特徴を有しています。例えば、内陸部では、コメなどを中心とした農業が盛んで、沿岸部では、リアス海岸を生かしたアワビやワカメの生育といった水産業が行われています。豊かな森林資源を活用した林業も全国的に有名です。
 
東日本・広域営業本部 北海道・東北営業部
盛岡支店 石田和良 支店長

 最近のトピックとしては、2023年1月に米ニューヨーク・タイムズ紙の「23年に行くべき52カ所」で盛岡市が選ばれ、外国人観光客が多く訪れています。こうしたことを背景に、案内用のデジタルサイネージが設置されるなど、観光向けのIT活用は進んでいるといえます。

 観光業のほかの業種でも、人材不足を補うため、業務効率化(ワークフローや各種自動化)に向けたシステムやアプリケーションの問い合わせが増えてきています。全国的に問題になっているランサムウェア対策として、セキュリティーに関する意識も高まっています。

 企業だけでなく、自治体も動き出しています。岩手県は、20~28年度を期間とする「いわてIT産業成長戦略」を策定し、産学官連携強化による取引拡大・新製品開発の推進、IT企業の集積促進、高度IT人材の育成・確保・定着の三つを基本戦略に施策を展開。花巻市では、高齢化による担い手不足を解消すべく、スマート農業に力を入れています。

 一方、自動車部品や半導体関連の企業が進出している県南部の工業団地では、工場の物品やシステムはこれまで、本社による一括購入となっていました。しかし、この1、2年は、一部について現地での調達が認められるようになり、地元企業にとってはビジネスチャンスの拡大が見込めると思っています。

 県内で多くの方にお会いする中で、県民性は慎重だと感じています。とはいえ、良いものに対しては非常に積極的な面があり、一部でITの導入や活用が進めば、各地に広がっていくとみています。課題はあるものの、自治体や企業のIT活用に向けた意欲はあるので、発展の余地は十分にあると考えています。
 
盛岡市内から臨む岩手県内最高峰の岩手山(標高2038メートル)。
雄大な姿が魅力。冬が近くなると山頂付近が積雪するなど、
季節によってさまざまな表情が楽しめる。

福岡エリア
高まるIT投資への意欲 再開発でさらなる進化を遂げる

拠点エリア 九州エリア
拠点データ 福岡第1、第2支店
住所:福岡県福岡市博多区博多駅前3-22-8(朝日生命博多駅前ビル)
電話番号:092-433-5621(福岡第1支店)
     092-433-5630(福岡第2支店)

 福岡県は、九州の玄関口として古くから栄えてきました。福岡空港から中心部へのアクセスは抜群ですし、豊富なグルメをはじめさまざまな魅力があることから、多くの観光客でにぎわっています。福岡市を中心とした福岡地域は、第3次産業や九州の管理中枢機能が集積されており、学術研究都市構想も進んでいます。また、天神地区の再開発計画「天神ビッグバン」による建設ラッシュや、3月に福岡市営地下鉄七隈線が博多駅まで延伸したことで、人・モノの流れが大きく変化しています。全国に人口減少に悩む地域は多いですが、福岡市の人口は増加を続けているのも明るいトピックです。
 
西日本営業本部 九州営業部
難波祐介 副部長

 ITの面では、福岡県による「福岡県総合計画」の取組事項に「デジタル社会の実現」が示されており、具体策として「福岡県DX戦略」が策定されました。こうしたことを背景に、IT投資に積極的な企業が増加しています。クラウドサービスの利活用、それに伴う通信環境強化、セキュリティといった内容など、幅広い検討がされています。生成AIの活用に向けた実証実験に福岡市が取り組むなど、自治体も積極的に最新技術を活用する流れが出ています。また、官民連携で設立したスタートアップ支援施設「FUKUOKA growth next」をはじめ、スタートアップ支援にも積極的です。

 天神ビッグバンでは、2026年末までに70棟のビルや施設の建て替えが予定されており、街が急速に進化しています。オフィスを構える企業は、ITへの感度が高く、投資にも積極的だと予想できるので、さまざまなビジネスチャンスが生まれそうです。

 全国的な傾向だと思いますが、福岡エリアでもSEをはじめとしたIT人材が不足しているため、ニーズがあっても対応できないケースもよく聞きます。その中で、将来に向けて「STEAM(スティーム)教育」を開始する学校が出てくるなど、IT人材を創出しようという動きがあります。福岡地域から福岡県、そして九州にこういった流れが拡大していくことを期待したいです。
 
数ある福岡グルメの中でも、特に人気が高い「とんこつラーメン」。
人気店には、その味を求めて長蛇の列ができる。
空港や駅ビルには、ラーメン店が並ぶ一画が設けられている。
  • 1

関連記事

週刊BCN 特別連載企画<第2回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は

週刊BCN 特別連載企画<第1回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は

外部リンク

ダイワボウ情報システム=https://www.pc-daiwabo.co.jp/