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富士通ビジネスシステム ウェブに経営資源を集中

2002/12/16 16:49

週刊BCN 2002年12月16日vol.970掲載

 富士通ビジネスシステム(FJB、鈴木勲社長)は、ウェブサービスに経営資源を集中させる。同社は2001年3月期に20億円の最終赤字を計上後、大規模な構造改革に着手した。リストラ実施後は、売上高が年々縮小したものの、03年3月期には3期ぶりの最終黒字に転換する見通しだ。

.NET戦略へ全面的な移行

 富士通ビジネスシステム(FJB、鈴木勲社長)は、ウェブサービスに経営資源を集中させる。同社は2001年3月期に20億円の最終赤字を計上後、大規模な構造改革に着手した。リストラ実施後は、売上高が年々縮小したものの、03年3月期には3期ぶりの最終黒字に転換する見通しだ。鈴木社長は、「売上高の減少は今年度で最後にする。来年度(04年3月期)は、わずかながらでも増やす」と、底打ちを宣言。来年度以降の成長で原動力になるのは、マイクロソフトの .NET戦略に基づくウェブサービスへの全面的な移行だ。

 原料調達から生産、物流、販売まで連続したサプライチェーンから外れた企業は、生き残れない――。FJBの新戦略の基本は、ウェブサービスを基盤としたサプライチェーンを構築することにある。ウェブサービスの基盤となる製品として、来年1月から「ウェブASコンポーネント」を投入する。.NETフレームワーク(枠組み)とウェブサービス完全準拠の新システムだ。.NET上で動く本格的なウェブサービス対応の業務システムコンポーネントとしては、他社に先駆けての製品化となる。

 今後、新しく開発する主要システムは、基本的にすべて.NETフレームワーク上に、FJB独自の「ウェブASフレームワーク」をかぶせ、そのフレームワーク上で各種ビジネスコンポーネント(個別のアプリケーション)を動かす方式にする。これまで、FJBが開発したC/S型(クライアント/サーバー型)の業務システムを導入している企業は約1000社、旧オフコンのシステムを導入している企業は数1000社にのぼる。まずはこれら既存顧客への売り込みを仕掛けると同時に、他社ユーザーの攻略も始める。

 業務システム更新の“落とし文句”は、「経費削減」や「人員削減」という後ろ向きなIT投資ではなく、「業務改革」と「ビジネスの拡大」を切り口にする。清水吉治・取締役マーケティング本部副本部長兼経営企画室長は、「旧来のEDI(電子データ交換)では実現できなかった拡張性のあるサプライチェーンの仕組みとして、来年以降、ウェブサービスが台頭するのは必至。ビジネス拡大の基盤としてウェブサービスの必要性を訴求する。顧客企業の反応は上々だ」と自信を示す。

 アプリケーションは、コンポーネント(部品)化し、必要に応じて組み合わせる方式を採用。コンポーネント間のやりとりは、すべてXMLやSOAP(ソープ)といったウェブサービスの標準技術を採用したため、従来製品やJavaで手づくりするより安く仕上がる。このため、ソフトウェア部分での同社の売り上げは従来比で下がるものの、フレームワーク化やコンポーネント化など、新しいアーキテクチャーにより生産性を高め、利益重視で臨む。

 清水取締役は、「製造業、流通卸し、販売に至るまで、サプライチェーンの基盤はウェブサービスへと移行する。このチェーンから外れた企業は生き残れない。紙の伝票からクライアントソフトを使って、バチバチとデータ入力するのはやめましょう。ウェブサービスを使い、これまで取り引きのなかった国内外の企業と、系列の枠組みを超えてビジネスを拡げましょうと、顧客企業に提案していく」と、業務改革、ビジネスの拡大を訴求する方針。

 来年度は、ソフトウェアの販売比率のうち、約20%を新製品の「ウェブASコンポーネント」で売り上げる計画だ。財務会計や人事給与は、親会社の富士通製グロービアCを流用し、自社システムの柱にはウェブサービスを基盤とした販売管理を据える。戦略的なIT投資で、もっとも売り上げに貢献するシステムが販売管理であることから、敢えてほかの基幹システムに手を出さない。次の段階としては、販売管理をベースとしたCRM(顧客情報管理)やSFA(営業支援システム)、グループウェアなどのアプリケーションの品揃えを順次増やす。
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