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中国携帯電話市場 2004年いよいよ次世代へ 苦悩する独自規格「TD-SCDMA」

2004/01/05 20:19

週刊BCN 2004年01月05日vol.1021掲載

 世界最大の移動体通信市場となっている中国で2004年、いよいよ第3世代(3G)携帯電話サービスが開始される。それはまた、中国独自の3G標準であるTD-SCDMAを通じて、国を挙げて推し進める独自規格戦略の重要な一環ともなる。このTD-SCDMAがどのような形で3Gのスタートを迎えるのか注目だ。

 中国における3Gは、すでに世界標準であるW-CDMA、cdma2000にTD-SCDMAを加えた3種類の標準が混在する世界で唯一の市場になるとみられている。

 中国では03年、3Gの産業化に向けて大きく進展した1年だった。国内外メーカーは技術開発を進め、10月末に開催された「3Gインチャイナ-グローバルサミット2003」の実演テストでは、各標準がそれぞれの課題を残しながらも、一応の成功を収めた。

 これを機に、産業化へと大きく踏み出すはずだった中国3G。しかし、政府はいまだに3G解禁への具体的なタイムテーブルを掲示していない。

 この背景には、以前から叫ばれていたTD-SCDMAの劣勢が、技術テストによって改めて実証されたことがある。自主規格戦略を掲げる中国にとって、政府は何としてでも、市場におけるTD-SCDMAの優位性を確保した上で3Gを展開したいという思惑がある。しかし、こうした政府の慎重な態度は、直接、社会の3Gに対する不安へと繋がっている。

 上海新秦信息諮詢有限公司(上海サーチナ)は、昨年5月と11月の2回に分けて傘下サイト「新秦調査」のオンラインモニターを利用した移動体通信に関するマーケティング調査を実施。その結果、「3Gの商用化が進めば利用したい」、あるいは「利用する可能性がある」とした人の回答の合計は、第1回調査の65%から第2回調査では58%程度に減少し、その不透明さによるユーザーの不安を浮き彫りにしている。

 昨年、携帯電話の加入件数が固定電話を初めて上回るなど、中国の携帯電話市場は急速な発展を遂げている。しかしその一方で、市場はいまだ成熟しているとはいえず、3G展開は時期尚早との見方も一部では叫ばれている。そこで政府は、未成熟な市場から新たなステージへのステップアップとして3Gを捉えている面があるのも事実だ。

 こうした状況下で、現在注目を集めているのがW-CDMAを補足する形でのTD-SCDMAの採用。TD-SCDMAはW-CDMAとGSMネットワークを基盤にした際に互換性を有しているとされる。現に中国におけるW-CDMA採用を積極的にアピールするGSM協会の会長もこの方法を提言している。

 なかなか踏み出せない政府をよそに、国内外の端末メーカーは技術改良を進め、この3G市場に注力し続けてきた。それだけに、今年にかける思いは一際強く、政府も決断に迫られている。当初の予定では3G解禁は04年上半期(1-6月)となっている。(サーチナ・吉田雅史)
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