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<2004年を振り返る IT業界海外10大ニュース>IBM、パソコン事業を売却 大手企業の合従連衡進む

2004/12/20 21:17

週刊BCN 2004年12月20日vol.1069掲載

 IT業界では2004年もさまざまな出来事が起こった。長く続いたIT不況を脱却し、次世代への基盤造りがより重要な検討項目となった今年は、企業同士の提携や合併、売却劇も世界規模で行われるようになってきた。しかもそれらはこれまでとは違い、驚くほどのスピードで一気に展開しているのが特徴だ。さらに、12月に入ってIBMのパソコン事業売却という大きなニュースが飛び出すなど、05年へのプロローグとして盛り沢山の年末であった。今年起こった大きな出来事を振り返ることで、来年以降のIT産業界を占うことができるだろうか。(田中秀憲)

【10大ニュース 海外編】
・アップルのiPod、爆発的売れ行きに
・オラクルのピープルソフト買収決着
・ウィンドウズXP SP2提供開始
・最速スパコン競争、再びIBMが首位に
・フィッシング詐欺が蔓延
・ブログが大流行
・グーグルが株式公開、時価総額500億ドル
・ゲートウェイ、イーマシーンズを買収
・マイクロソフトとサン、歴史的和解
・IBMのパソコン部門、聯想集団へ


アップルのiPod、爆発的売れ行きに

 発売以来爆発的なセールスを記録し続けているiPod。今年に入ってからはminiの追加がその売り上げにさらなる拍車をかけ、米国に遅れて発売された諸外国でもいまだに品不足が続くほどの人気を維持している。

 アフターマーケットもスキンと呼ばれるケース類を始め、専用のスピーカーや車載用キットなど多岐にわたる商品が各社から発売されている。

 アップルコンピュータの経営が好転したのは言うまでもなく、あまりの売れ行きにiPod専門メーカーとしての生き残りさえ取りざたされることとなった。さらには画像表示機能付きモデルも発表され、事実上PDA(携帯情報端末)市場を駆逐したと言える。




オラクルのピープルソフト買収決着

 法廷闘争にまでもつれ込むことになった、オラクルによるピープルソフトに対する買収騒動。内容が敵対的株式公開買い付け(TOB)ということもあり、ピープルソフト社内の自社規定による買収拒否や、株主・取締役会による買収の不認可など、必死の対抗策が繰り広げられた。ピープルソフトの現取締役会会員が、オラクルが11月19日に提案した最終案を否決したことで、取締役会そのものの株主に対する造反を挙げ、別途取締役の候補者を選出した。

 こうして揺れに揺れた買収劇も12月中旬、オラクルがTOB価格を引き上げたことで決着。ERP(統合基幹業務システム)で世界シェア3割弱の企業が誕生することとなった。

ウィンドウズXP SP2提供開始

 発表以来多くの問題が露呈し続けているウィンドウズXPの第2弾メジャーアップデートである「サービスパック2」では、特にセキュリティ面での強化が特徴で、ポップアップ広告の排除やウイルス対策なども数多く盛り込まれている。

 しかし、大多数のユーザーには具体的なメリットが少なく、その普及度はマイクロソフト側が期待するほどではないようだ。加えて今年2月に連邦地裁から仮処分を受けたウィンドウズXPへのサン・マイクロシステムズ製Java機能の搭載義務もあり、いささか周囲に流されてのリリースといった感のあるアップデートといえる。

最速スパコン競争、再びIBMが首位に

 2年半の長きにわたって世界最速の地位を維持していたNECの牙城がついに崩れた。世界最速の名誉を手にしたのは、IBMの「ブルージーン/L」と呼ばれるスーパーコンピュータ。IBMはここ数年、IT技術のなかでもより高度な技術を必要とされるこの分野へ注力してきており、今回のタイトル奪還はこの面での成果を反映したものである。

 IBMはこの分野での第1人者であることを改めて証明し、シェアの拡大も果した。さらには今回の実験で使用されたOSがLinuxということで、スーパーコンピュータのビジネス面での実用化にも大きく前進したと評価されている。

フィッシング詐欺が蔓延

 その出現以降急速に成長し、今やIT犯罪の代表的存在にまでになったフィッシングメール詐欺。初期に多く見られたメール送付による単純なものに比べ、現在ではプログラムを駆使したより高度かつ巧妙なものが主流となりつつある。そのため、インターネット利用者を中心にその被害は広がるばかりで、関係各方面への懸念はますます広がっている。金融機関による注意勧告やメールソフトによる自動排除などの直接的な対策と並行し、この種の犯罪を取り締まる各種法整備も急ピッチで進められているが、対抗策は自ずと後手になりがちであり、2005年以降も多くの被害が予想されている。

ブログが大流行

 今や大ブームといって良いほどのブログ人気。多くのウェブサイトでは、かつてのBBS機能に取って代わり、ブロガーと呼ばれる有名ブログサイトの管理者たちは今ではネット上での発言力を日々強めている。

 今年の米大統領選挙では、選挙演説の各会場にブログ関係者の席が用意され、大きな話題となった。大手放送局など一部のメディアしか入場を許されなかった大統領選挙の報道席の一角を占めた彼らの姿は、さらなるブログの躍進を予感させるものとして、大統領選以上の注目を集めた。米国の今年のインターネット流行語大賞にも選ばれ、そしてついにマイクロソフトも参入を表明した。

グーグルが株式公開、時価総額500億ドル

 8月の新規株式公開で天文学的とも言える資金を調達したグーグルは、10月には公開後初めての決算を発表。その発表数字は第3四半期だけで8億590万ドルの売り上げと純利益5200万ドル。これにより同社の時価総額はホンダやソニーを抜いて500億ドルにも達し、IT産業の上位10社に堂々の仲間入りをした。

 創業当初より利益を生み続け、投資家の評価も高かったグーグルは、わずか6年で世界を代表する企業となり、創業者の2人は32歳を待たずに米国長者番付の50位以内に名を連ねることとなった。もちろん目指すはいずれのリストにもトップに君臨するマイクロソフトとビル・ゲイツである。




ゲートウェイ、イーマシーンズを買収

 家電分野にも進出し、企業規模では遙かに大きい米パソコンメーカーのゲートウェイは、小規模ながらパソコン販売では水をあけられていたイーマシーンズを買収した。

 イーマシーンズがもつ大手流通チェーン店内での販売スペースの入手が主目的と見なされるこの買収は、同社のニッチ市場へのマーケティング戦略をも手にすることとなり、結果としてゲートウェイは自社直営のショールームを順次閉鎖した。そしてこの買収は、IBMのパソコン部門売却とともに、大手パソコンメーカーの合従連衡の動きへの流れを象徴する出来事であった。

マイクロソフトとサン、歴史的和解

 両社の提携発表は今年4月だが、契約が10年の長きにわたることもあり、具体的な進展について声明が出されたのはようやく12月に入ってから。技術面、法的面、そして経営判断など多方面に影響を及ぼすこの提携は、両社とも前向きに捉えてはいるものの、その歩みは遅々として進んでいない。これはサン・マイクロシステムズのスコット・マクネリーCEOが声明で認めている。

 そもそも業界標準技術を争っていた2社の提携であり、今後の指針決定の方向性次第ではIT分野に限らず各方面に大きな影響を及ぼす可能性も高く、関係各社や政府は成り行きを注意深く見守り続けている。



IBMのパソコン部門、聯想集団へ

 年末になって今年最大の衝撃が走った。売却先は中国最大手のパソコンメーカー、聯想集団(レノボグループ)だ。古くはNECとパッカードベル、ヒューレット・パッカード(HP)とコンパックコンピュータ、そしてゲートウェイとイーマシーンズと、その多くが米国企業中心だったのに比べ、今回のレノボは中国企業であることが大きな違いだ。

 今後シェア争いが熾烈化することが必至の中国市場を見据え、IBMの〝脱パソコンメーカー〟の判断は順当と評価されている。今後5年間、レノボはIBMのブランドやシンクパッドの商標を利用できる。その間に具体的な成果を上げることが可能か否かが、この売却劇の成否を決めることとなろう。
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