中国最大手パソコンメーカーの聯想集団(レノボグループ)は5月1日、米IBMのパソコン事業部門買収の法的手続きを完了したことを正式に発表した。レノボグループの楊元慶CEO(最高経営責任者)が会長に、米IBMのスティーブ・ウォード・パーソナルシステムグループシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーがCEOに就任した。新「聯想」の年間販売総額はおよそ130億ドル、販売台数は1400万台に達し、世界第3位のパソコンメーカーとなる。

 今回、正式に買収が完了したものの、買収発表自体は昨年12月。中国企業が一事業部門とはいえ、世界的企業を買収したということで、日本でも話題となり、聯想の知名度の低い日本では「電撃的」ともされていた。しかし、中国では聯想の存在感は圧倒的だ。一部の大型インフラ、重工業系の企業を除いて、独立系メーカーとして、聯想はすでに日本でもお馴染みの海爾(ハイアール)に次ぐ規模と実力をもつ企業である。

 中国ではパソコンといえば聯想だ。中国市場のシェアは30%近くに達しているといわれている。個人向けパソコンの人気メーカー調査などでは、4割から6割ぐらいの得票率を獲得するほどだ。

 聯想は、中国では「就職したいIT企業ランキング」で第1位にもなっている。中国の大卒初任給は、上海などの大都市でも新卒で年収3万元(約39万円)あればまずまずといわれる。そんななか、聯想の新卒年収は5.5万元(約71.5万円)ともされている。中国では、あらゆる意味で「憧れ」の企業だ。そういった意味で、「中国のソニー」と言っても、当たらずとも遠からずかもしれない。

 従って、米IBMのパソコン事業部門買収自体は、中国では「快挙」ではあっても、ある意味では当然のこととして受け止められた。むしろ、利益率の低いパソコン事業部門を買収したことで、米IBMにとっては万々歳であっても、聯想には資するところは少ない、という評価が目立った。

 その背景には、買収すること自体はすでに問題ではなくなっている、という考え方がある。優良で規模の大きい中国企業は、世界でも有数の「お金持ち」の会社になっている。米IBMに限らず、今後、世界的な企業が自社の不要(不採算)事業を中国企業に売却しようという動きは珍しくなくなるだろう。

 ただし、今回の聯想による買収は、確かに中国企業としては初めての世界的企業(の一部門)の買収だったために、障害も少なくなかった。昨年12月の買収発表以降、特に米IBMのパソコン事業部門の大型顧客である米政府からのクレーム(中国への機密流出懸念)もあって、一時は買収白紙撤回までささやかれた。しかし、結果的には、その買収発表当時でさえも、買収完了は05年6月とされてきたなかで、1か月繰り上げて実現した。これは聯想側の意気込みの大きさが決め手になったようだ。

 中国市場でかつて圧倒的なブランド力をもっていた「レジェンド」という名称を、03年に世界進出を視野に入れ、世界各国で各社が商標登録しているという理由であっさりと捨て去り、新ブランド「レノボ」を立ち上げた。04年には、会社名も「レジェンド」から「レノボ」に統一。聯想としては、当然今回の買収をてこに世界進出を大々的に展開していきたいところだろう。

 一方で、アジア・太平洋地域(日本を除く)では、デルやヒューレット・パッカード(HP)の猛追を受けている。中国ではまだまだ安泰だが、今後の聯想は自国市場の死守も課題となっている。

 米IBMのパソコン事業部門買収は、顧客流出、社員流出を含む合併にともなう混乱、ブランドの統合問題など問題は山積している。しかし聯想としては、世界進出を果たし、その結果として手に入れたブランドや信用力などの「財産」を、自国に逆輸入するというやり方で、自国市場のシェアを確保していきたいところだ。(サーチナ・有田直矢)