設計の世界は2次元から3次元への大きなパラダイムシフトに直面している─。米オートデスク(カリフォルニア州)のキャロル・バーツ会長兼社長兼CEOは、このほど米フロリダ州オーランドで開催したユーザーカンファレンス「Autodesk University(オートデスクユニバーシティ)2005」のゼネラルセッションで、3次元CADの潮流が設計の世界にかつてない変革をもたらしつつあると強調した。3次元への移行とともに、設計プロセスの上流から下流までデジタル情報がシームレスに流れる環境が現実になるという。最新のCAD事情をユーザーカンファレンスに追った。

 「オートデスクユニバーシティ」は世界各国からCAD関連技術者が集まり、オートデスク製品の活用事例やノウハウ、アイデアなどを相互に情報交換する場として毎年開かれており、今年で13回目を数える。参加申込総数は、日本からの35人を含め63か国・5125人と初めて5000人を突破。11月28日からの会期4日間で、延べ400以上ものクラスやセッションが設けられ、どの会場も熱心な聴講者で賑わった。

 通常、自社で蓄積してきたノウハウを社外に公表することはライバル企業を利することにもなりかねないが、オートデスク製品ユーザーにとっては例外のようだ。関係者によると、カンファレンスでの発表が企業の知名度を上げ、CADの世界で一目置かれる存在になれるという。

 オートデスクのユーザー同士の結束は強く、世界各地でユーザー会が自主的に活動し、研修会の開催や製品改良に対する要望などを積極的に行っている。今回のカンファレンスでも、北米を中心とするユーザー会「AUGI(オートデスク・ユーザーグループ・インターナショナル)」の年次会議「AUGIアニュアルミーティング」が初日に開かれ、2500人以上が参加した。

 AUGI会長を務める日系米国人のヨシ・ホンダ氏は年次会議で、「これまでユーザー会は汎用CADソフトを中心に活動してきたが、最近は各インダストリーに特化した製品についても情報交換をしたり、セッションを開くようになってきた」と強調。「昨年はユーザー会主体のトレーニングイベントは1回にとどまったが、今年はすでに20回を数えるまでになり、来年はさらに増やす」との意向を示した。同時に、オートデスクに対する製品の改良要望も1つひとつ列挙し、オートデスク首脳陣にプレッシャーをかけた。

 AUGIはこれまで北米地域を中心に活動してきたが、今回の年次総会を機に「世界各地域・国ごとに活動しているユーザー会組織をつなげてグローバル化し、それぞれの声をAUGIに吸い上げる形でコミュニティを広げていく」(ホンダ会長)方針も決まった。手始めとして、日本のユーザー会組織を「AUGIjp」として位置づけ関係を深めていくこととし、年次総会の場で鈴木裕二アド設計社長(ユーザー会副会長)ら9人の日本人主力メンバーが壇上で紹介された。

 ユーザーからの強いエネルギーに対し、オートデスク幹部も真っ向から受けて立つのが「オートデスクユニバーシティ」の特徴だ。

 「いま設計の世界は2次元から3次元へステージが移行しつつあり、皆さんを取り巻く環境はドラマチックに変化している。かつてドラフター(手書き製図用具)からCADへ移行した時以上に大きなパラダイムシフトに直面している。紙からデジタルデザインデータへと変遷するなか、今後は勝者と敗者がはっきりと分かれる時代を迎える。デジタルデザインデータを活用するか抵抗するかは、皆さん次第だ」。2日目に開催されたゼネラルセッションで、オートデスクのキャロル・バーツ会長兼社長兼CEOはこう呼びかけた。

 現在の設計プロセスは上流工程から下流行程へと作業が進むなかで、各プロセスごとのデジタル化は図られているものの、プロセス間の受け渡しの際にはいったん紙図面が介在しており、これが効率化の妨げになっている。これについてバーツ会長は、今後は3次元CADへの移行とともに「設計はデジタルに始まり、デジタルで終わるようになる」と言及したうえで、設計データのシームレスな流れを築くには「プロセス管理と情報共有が必要」とし、それを実現するビジネスプロセス管理ツールの重要性を訴えた。さらに続けて、「オートデスクの使命は、皆さんのアイデアを形にすること。今後の製品作りには、皆さんからのフィードバックが非常に重要」と賛同を求めた。

 これを受け次にスピーチに立ったカール・バスCOOも、「どのような業界にいようと皆共通の課題を抱えており、グローバルで競争に勝つことは容易ではない。企業や国という障壁を越えて情報を統合し、プロセスをつなげることが非常に重要になっている」と述べ、架空の新工場建設事例によるデモンストレーションを行い、建設予定地の選定から建物の設計、製造ラインの設計、土木・建築作業に至る統合化されたデータの流れをシミュレーションで披露した。

 ゼネラルセッションでは、ニューヨークのワールドトレードセンター(WTC)跡地「グランド・ゼロ」で2006年から建設が始まる高さ約540メートルの超高層ビル「フリーダム・タワー」の設計でオートデスク製品が活躍し、かつてはあちこちに分散していた図面がペーパーレスで統合管理されている状況も紹介された。

 また、ディズニーランドの施設やアトラクション、ショーなどの企画・設計・建築を担当するウォルトディズニーイメージニアリングのトム・マッキャン・エンジニアリング担当上席副社長がゲストスピーカーとして登場し、「インディアナジョーンズ」、「タワーオブテラー」、「スペースマウンテン」、「エクスペディション」などの人気アトラクションの設計をオートデスクの3次元ツールを使ってシミュレーションする光景などが詳細に説明された。

 「2次元から3次元への変化に柔軟に対応しにくい状況もあろうが、オートデスクは移行のための支援をさせていただき、皆さんと一緒に歩みたい」(バーツ会長)。技術者のなかには、長年慣れ親しんだ2次元CADから3次元への移行に難色を示す向きも多いのが現実だが、その壁を乗り越える時期にきていることを何度も訴え続けていたのが印象的だった。