組み込みソフト事業の落ち込みが鮮明になってきた。携帯電話の落ち込みで事業縮小を余儀なくされる電機メーカーが相次ぐためで、有力SIerは軒並み同事業の売り上げを減らす。SIer各社は携帯電話の不調を見込んで、早くから自動車分野へ軸足を移す努力を続けてきた。だが、世界的な消費の冷え込みで、自動車関連も楽観視できない状態が続く。大手SIerの組み込みソフトへの本格的な参入もあり、競争がより一段と激しさを増しそうだ。

“頼み”の自動車関連も不透明

 電子情報技術産業協会(JEITA)発表による今年9月の携帯電話国内出荷台数は、前年同月比で3か月連続マイナスの同93.1%。夏商戦が早々に息切れを起こした8月の同51.4%に比べれば回復しているものの、通信キャリアの販売方式の変更もあり、大幅な出荷増は見込めないのが実情である。

 組み込みソフト開発大手の富士ソフトは、「海外の携帯電話市場は伸びているところが多く、ここに出て行く道しか勝ち残る方策はない」(白石晴久社長)と、国内携帯電話市場の飽和状態を踏まえて、海外に活路を求める。組み込みソフト開発で培ったノウハウをパッケージ化し、海外ベンダーが採用しやすいよう“プロダクト”に仕上げる取り組みに力を入れる。

 携帯電話の技術をベースとした「FSMobile」やデジタルテレビ技術をベースにした「FSDTV」などのミドルウェアプロダクトをすでに開発しており、国内外への拡販に努める。周辺機器メーカーのバッファローが力を入れるアナログテレビ向け地デジチューナー新製品には富士ソフトのミドルウェアを採用。海外メーカーからも富士ソフトのミドルウェアに対する引き合いが強まっており「積極的に拡販していく」方針を示す。

 富士ソフトの今中間期(4~9月期)の組み込みソフト事業の売上高は、前年同期比95.9%の310億円。携帯電話の落ち込みを他の分野でカバーしきれなかった。富士通BSCの中間期の組み込みソフト事業も、携帯電話向けの落ち込みが足を引っ張り、同89.4%の28億円と苦戦。コアも同様で、携帯電話向け組み込みソフトは同98.6%と低調だった。

 また、自動車制御やカーナビなど車載機器への組み込みソフト需要については、世界的な消費冷え込みからくる自動車の販売不振で、「来期からどうなるか見えにくい」(コアの井手祥司社長)と、不安を滲ませる。富士ソフトの白石社長は、「自動車は向こう2-3年を見越して開発しているので“中核的な人員規模は維持してほしい”と、メーカーから声をかけられている」と、今すぐに需要が「“総崩れ”になることはない」とみる。

 一方、SIer最大手のNTTデータは、携帯電話の有力メーカーであるパナソニックモバイルコミュニケーションズとの合弁会社NTTデータMSEを今年10月に設立。これまで弱かった組み込みソフトの領域へ進出を加速させる。パナソニックは三洋電機のグループ化に向けて準備を進めており、大手SIerの参入や電機業界の再編は組み込みソフト事業にも影響を及ぼす見通しだ。