「紙プロセスの壁」除去で

 富士ゼロックス(山本忠人社長)は、大型案件で大手コンピュータメーカーの系列SIerなどと連携した「ソリューション販売」を本格的に開始した。ERP(統合基幹業務システム)など基幹システムとデジタル複合機(MFP)を隔てていた「プロセスの壁」を取り除く同社独自の紙文書ソリューションを、大手企業に対しSIerと共同提案する「商流」を確立する。将来的には、SaaS型サービスの普及を見据え、中堅・中小企業(SMB)に対してSIerと共同で展開できる体制を築く計画。「ソリューション販売」で競合するリコーやキヤノンとの対決姿勢を強める。

 富士ゼロックスは昨年度(2009年4月期)当初、SIerとの協力関係を強めることを目的に20人弱で構成する新組織「アライアンスプログラムオフィス」を設置した。昨年末から現在までに、SIerを対象にした説明会を10回以上開くなど、パートナー獲得策を積極化している。

 SIerと連携強化する施策としては、これまで他社MFPはもとよりシステム化が困難だった紙文書のフローと基幹システムのフローを統合できる同社の紙プロセス統合ミドルウェア「Process Gateway for Apeos(PGA)」を使ったソリューション展開を強化した。PGAを利用することで、SIerはMFPの制御に関する技術的な知識がなくても、基幹系の業務システムを構築する際に、SOA(サービス指向アーキテクチャ)環境などでMFPとシステムを簡単につなげ、紙文書(電子化)のフローとあわせて企業に提案することができる。

 同社は、SIerが大企業に大型システムを提案する際に自らが関与するための共同施策を開始しているほか、SIer独自にMFP周りを構築する際の支援策を確立することで案件を増やす体制をつくる。

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 PGAは同社MFP「ApeosPort」に搭載して利用することで、ERPやCRM(顧客情報管理)などの業務システムと電子化された紙文書を連携させ、電子化する時の作業などで「ヒト」が介在する業務フローを自動化できる。これにより、不正申請のトラブル防止や内部統制上の監査などに対応でき、業務の効率化を図ることができる。アライアンスプログラムオフィス責任者の岡宏晃・ソリューション本部部長は「J─SOX法に関連する重要文書の統制プロセスは完成している。ただ、多くの企業では、紙文書を扱う段階で不正が介在する危険性がある」と指摘する。プリントアウトや紙文書の電子化などのプロセスで内部統制上の不安を残しているというわけだ。

 同社は昨年7月、SAPジャパンと協業した。両社はSIerに対し、SAPのERPやエンタープライズ・サービス・バス(ESB)「NetWeaver」などと富士ゼロックスのPGAを接続した業務システム連携を支援する。例えば、企業内の見積書、納品書、領収書など証憑(しょうひょう)となる紙文書を「ApeosPort」を介して電子化し、PGAを利用してSAPのERPの購買データなどと連携することができる。SAPジャパンに限らず、基幹システムに関係するソフトウェアを持つメーカーとのアライアンスを本格化する計画だ。

 岡崎部長は「こうした文書管理に伴う“人間系”のプロセスをシームレスに統合するには、相当の技術力とノウハウが必要」と、この部分をSIerと役割分担することでSIerのシステム提案の幅を広げる作戦だ。将来的には「SaaS/クラウドサービス型のシステムが増えれば、SMBが文書管理の部分をデータセンターなどへ外出しすることが増える」と、国内のサービス型ビジネスの進展に応じてSMB向けの施策を講じていく考えだ。(谷畑良胤)

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分散印刷波及で方針転換

 富士ゼロックスはこれまで、大型基幹システム直結のプロダクションプリンタなどの領域を中心に超大手のSIerと協業関係を保ってきた。

 ところが、大手企業などで大量出力する帳票類などの「分散印刷化」や、それ自体をアウトソーシングする仕組みが浸透し始め、デジタル複合機(MFP)を含めた領域でもSIerと共同でシステム提案する必要性が高まっている。

 自社プリンタ以外の関連機器やソフトウェアなどを組み合わせて「ソリューション販売」を積極化するリコーやキヤノンとは一線を画し、富士ゼロックスはプリンタメーカーならではの「プリンタ周り」を担当し、SIerと役割分担を明確化にしてSIerとの連携を深める作戦に出ていると言える。

 同社ソリューションでキーとなる紙プロセス統合ミドルウェア「Process Gateway for Apeos(PGA)」の効果測定では、すでに子会社の富士ゼロックス情報システム(従業員559人:08年9月現在)が実際に導入して、文書管理などに関係する業務を単月で「37.4人月」も削減するというデータを得ている。こうした成功事例を示しつつ、富士通やNECなどの国内大手コンピュータメーカー系列のSIerを獲得する作業を進めている。

 ここ数年は、競合するコピーメーカーのうち、リコーは「ノンハード」分野の売上高を2年後に「全売上高の20~30%に引き上げる」(近藤史朗社長)方針を打ち出し、キヤノンも07年6月に開発系SIerのアルゴ21を買収して「ITソリューション」の比重を高める戦略を打ち出すなど、“箱売り”に頼らない「ソリューション販売」へのシフトを強めている。

 競合のキヤノンとリコーがせめぎ合いを繰り広げる間、富士ゼロックスは両社に比べて目立った動きを見せずに静観してきた感がある。今回の取り組みは、これを打ち消す効果をもたらしそうだ。(谷畑良胤)