既存顧客とのアライアンスで拡販

 三井情報(下牧拓社長)はSaaSを切り口として、ITベンダーやこれまでに獲得した既存顧客などとの協業強化を図る。まずはCRE(企業保有不動産)管理関連のサービスを第一弾として提供開始。不動産関連のコンサルティング部門とアライアンスを組んで新規顧客の開拓を進めている。独自のビジネスモデルを見出すため、既存顧客を絡めた売り方で他社との差異化を模索する。アプリケーションの拡充やプラットフォームまでを網羅したサービス型モデルの構築も目指しており、新しい事業の確立を見据えている。

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 三井情報は、SaaSサービスの第一弾としてCREの有効活用を支援する管理ツール「MKI CRE Suite」を8月下旬から提供開始。今後3年間でユーザー企業100社の獲得を目指している。ターゲットユーザーは不動産を保有する一般企業で、幅広く需要を掘り起こしていく方針だ。

 サービスの提供形態は、グループ会社のMKIネットワーク・ソリューションズが所有するデータセンター(DC)を利用し、三井情報が営業基盤の確立を進め、これまでSI(システム構築)やNI(ネットワーク構築)などで獲得した既存顧客に対して提案していくほか、コンサルティング会社とのアライアンスで新規顧客を開拓する。中立的なコンサルティング部門を組織化している不動産関連企業の複数社と組んだ。渡辺卓弥・事業開発本部副本部長は、「一般企業を対象にCRE関連のサービスを提供していくうえでのポイントは、管理の重要性をきちんと訴えていくこと。当社の営業力と不動産関連企業のコンサルティング力を組み合わせることで、ユーザー企業を増やしていく」と狙いを語る。

 同社がSaaS提供で狙っているのが、今回のような戦略的なアライアンスだ。「MKI CRE Suite」でアライアンスを組んだのは、これまで三井情報がSIやNIなどで顧客として獲得した企業で、「顧客と当社の双方がメリットを得られる」と判断した。SaaSとして不動産関連のアプリケーションだけでなく、「次に、省エネなど環境問題対策に関連したサービスなどをラインアップする」と、さらに商材を拡充する計画を立てており、サービス開始に備えて多くのベンダーや既存顧客に対して協業のアプローチを図っていく。

 同社は、さまざまな業界で大企業を中心にSIやNIを手がけてきた。この実績をベースにSaaSを新しい事業の柱の一つとして確立していくわけだが、「アライアンス企業とともにSaaSを直接顧客へ提供するという事例を多く作っていくことで、ユーザー層を広げていきたい」との考えを示す。大企業だけでなくSMB(中堅・中小企業)もユーザー対象とし、「特定業界のノウハウをもち、SMBに対してアプローチしているベンダーとのパートナーシップ構築も模索する」としている。

 また、SaaSサービスの種類はアプリケーション提供が中心であるため、「PaaSやHaaSなどプラットフォーム側を中心にサービス提供しているベンダーとアライアンスを組むことも視野に入れる」としている。SaaSを切り口に複数の販売モデルを確立することによって、「他社との差異化を図っていく」と強調している。同社は、グループ内で所有するDCを最大限に活用するためにSaaS事業に乗り出した。さまざまな角度から売り方を構築していくことで、SaaSを手がけるベンダーのなかで一歩先を走る。SaaSのビジネスモデルは「約1年で築き上げる」としている。SaaS事業を柱の一つとして確立し、主力事業のインテグレーションを増やすことにもつなげる。(佐相彰彦)

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SaaSで提案の幅が広がる

 三井情報は、2007年4月にSIerの旧・三井情報開発とNIerの旧・ネクストコムが合併して設立したことから、SIとNIの融合ビジネスに力を注いでいる。これまでも、システム案件で統合インテグレーションを提案してきたが、SaaSの追加で拍車をかけようとしている。

 「MKI CRE Suite」を例に挙げれば、導入促進に向けて、まずは既存ユーザーにコンサルテーションを提供。そのために不動産関連企業のコンサルタント部門と協業した。渡辺卓弥・事業開発本部副本部長は、「CRE関連は新しい分野なので、きちんと説明することによってはじめてユーザー企業の理解が得られる」と認識している。その際、ユーザー企業から低コスト化の声が出てくればSaaSを提案。「自社でシステムを構築したいという要望があった場合、ネットワークインフラからコンピュータシステムまで提供していく」と、SIとNIをもつ強みを生かす。

 また、SaaSアプリケーションの拡充時に販売面などでITベンダーとアライアンスを組んだ際は、「パートナーを組んだベンダーがビジネスとして手がけていない部分を当社がバックアップする。お互いがメリットを享受できる」としている。

 別の角度からも、同社が戦略事業に据えるUC(ユニファイドコミュニケーション)に関して「SaaS化を検討している」という。ネットワークインフラ、IP電話端末、SaaSアプリケーションなどを組み合わせて提供。ここでも機器販売を中心としたベンダーと組んで拡販していくことも模索している。

 SaaSを手がけるベンダーは増えつつあるものの、日本は米国に比べてSaaSの普及が遅いとの見方がある。ユーザー企業がSaaSを導入しようと自らアクションを起こすケースが少ないからだ。三井情報は、SaaSで販売網を構築することに加え、インテグレーションを組み合わせた複数の角度でシステム案件を獲得する戦略を打つ。(佐相彰彦)