医療・介護向けITシステムの分野で、専業ベンダーの勢いが増している。キヤノンITSメディカル(大阪市、達脇正雄社長)は診療所や健康診断、ワイズマン(盛岡市、湯澤一美社長)は介護をベースに中堅・中小規模の病院の電子カルテ市場を狙う。政府IT戦略本部は、診療所や介護を含む「地域連携医療」実現への工程表を今年6月に公表。この分野を得意とする医療・介護の専業ベンダーのビジネスにも、またとない追い風が吹く。

キヤノンITSメディカル
達脇正雄社長
 キヤノンITSメディカルは、診療所の電子カルテ販売に力を入れる。診療所では、医療事務(レセプト)の電子化は比較的順調に進んだものの、電子カルテの普及率は10%程度と低い。カルテの電子化は、医療・介護施設がオンラインで診療情報を共有する「地域連携医療」に不可欠。しかし、2010年3月までのおよそ2年間は、診療所向けのレセコン納入に人手が割かれた。同事業の売上高は前年同期比15~20%増の高水準で推移するものの、人員の手当が十分にできずに「電子カルテの納入は後手にまわってしまった」(達脇社長)と、悔しげに語る。

ワイズマン
湯澤一美社長
 同社は、レセコン需要が一段落した今期から、診療所向けの電子カルテの営業活動を本格化するとともに、中堅・中小病院への電子カルテの販売にも取り組む。また、キヤノン本体が製造するハンディターミナル(業務用の携帯情報端末)を活用した健康診断向けシステムでのシェア拡大を目指す。レセプトや電子カルテは、主に富士通の製品を取り扱っており、「診療所向けではトップクラスの販売実績」(同)と自負。ハンディターミナルを活用した健診支援システムは、同社グループの独自商材であり、「今後伸びる余地が大きい分野」と意欲を示す。

 一方、介護・福祉事業所向けシステムでトップクラスのシェアをもつワイズマンは、電子カルテなど医療向け商材の拡充を急ぐ。年内をめどに投入する新しい医事会計は、子会社を通じて他社へのOEMも予定。開発投資の早期回収に向けて、自社販売だけでなく、他社の販路も活用する。直近の通期売上高は約65億円だが、介護・福祉での知名度の高さを生かすと同時に、地域医療連携の追い風を最大限生かすことで中堅中小規模の病院向けのビジネスを拡大。「介護・医療ともに伸ばす」(湯澤社長)ことで、近い将来年商100億円を達成する方針だ。(安藤章司)