深層学習で“未払い”の本質に迫る

 後払い決済サービスを手がけるネットプロテクションズは、AIを活用して与信審査の精度を5倍に高める技術開発にめどをつけた。今後1年以内に本番システムへの実装を目指す。今回のAI活用は、深層学習(ディープラーニング)方式を採用し、取引データの一部を使って実証実験を行った。AI開発にあたっては、キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)と協業し、キヤノンITSが独自に開発したAI基盤を駆使。与信審査の精度の大幅向上が実現すれば、貸し倒れのリスクを軽減するとともに、より多くの利用者に後払い決済サービスを利用してもらえるようになる。

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左からキヤノンITソリューションズの古俣俊之チーフ、ネットプロテクションズの長谷川智之氏

 従来、機械学習方式を使って与信審査の精度を高めてきたネットプロテクションズだが、今回の深層学習の機能を実装すれば、「与信のぎりぎりまで一段と歩み寄ることが可能になり、結果として後払い決済サービスが利用できる消費者のすそ野を拡げることができる」(ネットプロテクションズ・マーケティンググループの長谷川智之氏)と期待を高めている。

 具体的には、過去に未払いや支払遅れの履歴があったとしても、それが「うっかり失念していた」レベルであれば利用可能にしたり、逆に与信枠の範囲内でも「不正取引」の傾向や兆候がみられれば、決済できないような判定ができるなど、与信審査の精度が高まる。うっかり支払いを忘れるのと、踏み倒す意図をもった不正取引では、同じ“未払い”でも本質的に異なる。この「本質的な部分を深層学習によって浮き彫りにする技術の開発に成功した」と、キヤノンITソリューションズ金融営業第二部の古俣俊之チーフは胸を張る。

 ネットプロテクションズの決済サービスは、ネット通販などで後払いを可能にしているのが大きな特徴だ。ネット通販会社にはネットプロテクションズが代金を立て替えて先払いし、消費者は商品を受け取った後、ネットプロテクションズに代金をコンビニなどで後払いする。基本的にはクレジットカードをもっていない未成年者や退職者、カードを使いたくない人が利用するケースが多い。

 また、両社はこれとは別に、取引データに含まれる商品情報を自然言語処理の技術を使って抽出することにも成功している。例えば、同じ商品でもA店舗では「【送料無料】三角コーナーいらず5個セット」、B店舗では「《生ゴミ水切り用》三角コーナーいらず本体+専用袋5枚付」などと記載されているとする。これを自然言語処理によって「三角コーナーいらず」だけ抽出する仕組みだ。従来の抽出では「三角コーナー」だけ拾ってしまったり、同じ商品だと認識できなかったり課題が多かったが、生データを使った実証実験では正答率9割以上を叩き出している。

 購入した商品のデータクレンジングの精度を高めることで、「マーケティングや関連商品をレコメンド(推薦)の質も高められる」(古俣チーフ)と話す。本番環境へ実装したのちには、ネットプロテクションズの決済サービスを利用する店舗の売上増につながる施策に活用していくことで、ビジネスの活性化に役立てていく方針だ。(安藤章司)