クラウドERPで日本企業の競争力強化に貢献
SIerにも新たな商機をもたらす


 韓国の有力ERPベンダーである永林院ソフトラボ(權寧凡代表取締役)は、今年6月、日本法人としてEVERジャパン(前田朝雄社長)を設立した。2003年から日本市場に進出してはいたものの、販路は限定的で、それほど大きな成功を得られなかったのが実情だ。しかし同社は、14年にクラウドERP「SystemEver」をリリースしたことをきっかけに、グローバル市場、とくにアジア地域での拡販を強化する方針を打ち出した。その橋頭保を築くべく、日本市場の攻略に本格的に乗り出した。權代表取締役に、同社のビジネスモデルや製品の強み、日本市場での戦略などを聞いた。(取材・文/本多和幸)

デジタルトランスフォーメーションの
核になり得るクラウドERP

――永林院ソフトラボの現在の事業概要について。
 
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 1993年に法人を設立し、97年に中堅・中小企業向けのERPパッケージをリリースした。以降、これを主力事業として順調に成長してきた。ユーザー企業数は1500社以上、直近の16年の売上高は25億円ほどで、19年までに売上高は60億円まで成長させたいと考えている。ユーザーの中心層は製造業の年商20億円から300億円規模の企業だが、他の産業、さらにはより小規模な企業、大規模な企業のいずれにもユーザー層は徐々に広がっている。いずれにしても、韓国国内では、中堅・中小企業向けERPパッケージのトップベンダーとして認知されていると自負している。

――現在の主力製品は。

 14年にリリースしたクラウドERPの「SystemEver」だ。Azureをクラウド基盤として採用していて、韓国マイクロソフトとは非常に緊密なパートナー関係にある。中小企業、中堅下位層の企業をコアターゲットとしており、アジア全域に展開しようと考えている。当社にとっては非常に戦略的な製品で、クラウドネイティブなERPとしてまったく新しく開発した。当社は11年に韓国政府のR&D支援企業に認定され、3年間でのべ約3億円の補助金を受けたが、そのおかげもあって競合企業よりも数年早くクラウドERPの開発に着手することができた。そして、14年には一旦完成したのだが、まだまだ満足いくものではなかったため、さらに1年、R&Dに追加投資するとともに、コンサルティングツールなどのコンテンツ整備なども行い、本格的な拡販を開始した。

――SystemEverの競合製品に対する強みは何か。

 まず、クラウド、モバイル時代を見据えたアーキテクチャを採用していることは大きい。IoTソリューションやAIと基幹業務(LOB)をつなぎ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の核としての役割を果たすことができる。当然、マルチデバイス対応も実現しており、タブレット端末やスマートフォンで業務をこなすことも可能だ。日本でもワークスタイル変革は大きなトレンドになっているが、そうしたニーズにもマッチする。

 そして、何よりもわれわれが強みだと考えているのが、ユーザー企業の業績向上に大きく貢献してきたという実績と、そのノウハウが惜しみなく投入されていることだ。私はもともとエンジニアとしてソフト開発のスキルをもっていたが、ERPパッケージの開発にあたっては、とにかく経営のあり方を研究することに心血を注いだ。結果として、当社のERPパッケージを導入した企業の多くは、事業規模が5年で2倍~3倍に成長している。10年で10倍に成長した企業もある。ERPは、LOBの現場の業務効率化に貢献するという側面もあるが、根本的には、ユーザー企業の経営を向上させるべきツールだ。SystemEverには、これまでのERPビジネスで培った高度な標準機能が搭載され、これらを柔軟に組み合わせることで、それぞれの企業の価値に直結する業務プロセスをノンカスタマイズで構築することができる。

将来的には日本市場向けに
50人規模の開発リソース投入も

――そうした強みが、韓国国外でも商機につながるとみているのか。

 まさにそのとおりで、日本をはじめ他の国・地域でも、SystemEverはユーザー企業の収益向上に貢献できる製品だと自負している。例えば、韓国国内ではSAP製品からSystemEverに乗り換えるケースもかなり多くなっていて、グローバルな競争力があることの証の一つだと考えている。

――日本市場をどう攻めるか。

 私は、韓国の業界団体の代表として情報サービス産業協会(JISA)との定例協議会を立ち上げたこともあり、日本の市場についてはよく知っているつもりだ。中小企業向けの本格的なクラウドERPという意味ではあまり選択肢がないように見受けられるし、大いにチャンスはあると思っている。日本経済は勢いを取り戻しつつあるが、日本企業の成長に貢献し、その流れをさらに加速させるサポートをしたい。

 また、当社のこれからの成長には、パートナーとの協業が不可欠。日本国内でもすぐれたパートナーを発掘し、彼らをサポートするかたちで事業を拡大していきたい。とくに中堅・中小企業層に顧客基盤をもつSIerは、クラウドビジネスへの転換に苦しんでいるとも聞くが、当社はそうしたベンダーに新しいビジネスチャンスを提供することもできるはずだ。彼らとともに日本でのビジネスを成功させ、一緒にアジア市場に打って出たい。

 日本法人のEVERジャパンには、日本の基幹業務システム市場で活躍してきた人材が加わってくれているし、韓国のR&Dチームでも、専門チームを結成して日本向けのローカライズを時間をかけてやってきた。現在、当社の社員数は約280人で、100人あまりがR&Dに従事しているが、軌道に乗れば、日本市場向けの開発に50人規模の開発リソースを投入する覚悟がある。われわれの本気度を日本のマーケットにはぜひ感じてほしい。