他システム連携も拡大

 法人向けチャットサービス「LINE WORKS」を展開するLINEの兄弟会社ワークスモバイルジャパン(石黒豊社長)は、グループウェアといったコミュニケーション・ツール市場で存在感が増している。国民の2人に1人の6800万人がダウンロードした「LINE」の使いやすさと、企業でのチャット利用の拡大などを背景に、大企業から中小企業まで幅広くユーザーを獲得。他システムと連携するためのAPIも充実しており、システムインテグレータ(SIer)の販売網も拡大している。

グループウェア機能を充実

 ワークスモバイルジャパンが、初めて国内で法人向けにサービスを開始したのは2016年1月。モバイル環境に最適化した次世代型グループウェア「Works Mobile」の名称でスタートした。17年2月には、個人向けLINEとの連携機能などを新たに盛り込み、「LINE WORKS」と名称変更している。
 
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石黒 豊
代表取締役社長

 LINE WORKSは、スマートフォン(スマホ)にインストールしたアプリケーションを介し、企業内の社員間や社外のLINEユーザーとチャットや音声通話、ビデオ通話、大容量ファイルを送信可能なメールなどの機能をもつ。価格は、税別で1ユーザー月額360円からと格安だ。石黒社長は、「LINEの使いやすさや、馴じみのLINEスタンプを使える楽しさをそのままに、ビジネス利用を想定した機能を備えている」と語る。

 国内では、次世代型グループウェアの「Works Mobile」として売り出したことから、グループウェアが備えるアドレス帳や掲示板、カレンダー、会議室機能、オンラインストレージなどの機能が搭載されている。

 クラウド・サービスであるLINE WORKSが比較される競合サービスとしては、マイクロソフトの「Office 365」やグーグルの「G Suite」などのほか、国産グループウェアのクラウド版がある。だが、「既存のグループウェアに限界を感じ、LINE WORKSを導入する企業が増えている」(石黒社長)と、働き方改革や生産性向上などの一環として、LINE WORKSが拡大基調にあると自信をみせている。

 実際、LINE WORKSの導入企業をみると、大手企業が並ぶ。代表的な例としては、東京海上日動があるが、同社では、3万人がLINE WORKSを使っている。IT導入の先進企業でもある同社は、全体の業務量をITで削減したことで、事務の女性社員を営業担当者として活躍させている。ここにLINE WORKSを導入。顧客接点の強化や働き方の改善に役立てているという。

 石黒社長によれば、導入経緯は、二通りある。「競合他社サービスと比べ全社導入する場合と、部門導入から全社導入に移行するケースだ。中小企業の場合は、LINEの使い勝手に慣れている経営者が使い始め、全社に適用することが多い」。最近の傾向としては、「人事部門からの依頼が多い」(同)と、学生の採用や中途採用で、LINEを使った見込み者とのコミュニケーション・ツールとしても使われている。

APIを提供、本格開発も可能

 最近のビジネスシーンでは、高機能デバイスの普及でスマホの利用率が大きくなった。スマホシフトによって、よりスピーディでリアルタイムにコミュニケーションをとる利用形態があたりまえになってきている。パソコンを立ち上げるような手間がなく、すばやく確認・返信できるスマホを利用する機運が高まっている。こうしたことに加え、知名度が高く、利用方法を知る人が多く、LINEの操作感で使えるLINE WORKSが普及しているのだ。 

 もう一つ、LINE WORKSが販売を伸ばしている理由について、石黒社長は次のように語る。「ビジネスパーソンの多くが、プライベートとビジネスの両方でFacebookなど、同じコミュニケーション・ツールを使っている。私用アカウントの業務利用は、アカウント乗っ取りや誤送信などによる情報漏えいなどの危険性がある」。いわゆる、企業の情報システム担当者が承認していないツールを使う「シャドーIT」問題の解決策の一環で、LINE WORKSが選ばれているという。

 LINE WORKSは、国内データセンターから全サービスを提供。東京海上日動のような大規模ユーザーにも対応できるインフラを備え、セキュリティ認証を多く取得している。競合するOffice 365なども、サービスの堅牢性は高いが、「LINE WORKSは、コストメリットと使い勝手で評価をいただいている」(石黒社長)と、違いを語る。

 LINE WORKSは、インターネット上から申し込み、サービスを利用できるため、直販のイメージがある。だが、「90%以上は、パートナー販売だ」(石黒社長)。パートナー契約する企業は、Works Mobileサービスの開始から2年弱で、現在30社程度までに増えた。業種も、中堅・大手SIerやデータセンター事業者、携帯キャリア、リセラーなど幅広い。

 同社はパートナー企業に対し、開発用のAPIを公開している。最近では、このAPIを利用し、LINE WORKSと勤怠管理システムなどの社内システムと連携させる開発案件も増えている。APIを使ってチャットボットの開発も可能だ。また、SAML2.0とOAuth2.0に対応しているため、他社製品とのシングルサインオン(SOO)を構築することも可能だ。「Active Directoryと連携したり、SOOを活用するなど、本格的にシステムをつくり込むケースも出てきた」(石黒社長)と、法人利用の拡大に期待を表す。

 石黒社長は、「LINE WORKSは、ユーザートレーニングが不要。SIerにとっては、開発で収益を得られるだけでなく、手離れよくシステムを提供できる」と、さらなるパートナー拡充に意欲を示す。(谷畑良胤)