【深セン発】技術革新の中心地として注目されている中国広東省深セン市には、創業を後押しする仕組みが充実している。同市に本拠を置くSeeed Technology(シード・テクノロジー)は、スタートアップ企業を支援する役割を担い、これまでに多くの起業家が描く夢の実現に貢献してきた。メーカーやIoT市場を担当する同社の蒋宇副総経理は、最近は「IoT向けの要望がかなり多くなっている」と説明。日本の状況については「爆弾がはじける前の状態だ」と表現し、今後、ニーズが急増すると予想している。(上海支局 齋藤秀平)

「大衆創業、万衆創新」の中心


 同社は2008年に創業し、当初はプリント基板の受託製造を手掛けていた。その後、深センで続々と誕生するスタートアップ企業向けのサービスを強化し、同社の特徴となっているオープンソース化したハードウェアの販売のほか、開発空間の提供や試作品の製造などを展開している。
 
シード・テクノロジーのオフィス

 同社の事業は、少量生産を求める起業家から好評を博し、深センの技術革新を支える企業に成長した。中国国内では、創業と技術革新を促進するために政府が設定したスローガン「大衆創業、万衆創新」の中心的な存在として注目されるようになっている。
 
シード・テクノロジーが提供する開発空間

 深センでは、同社のほかにも官民が一体となって創業を後押ししている。その結果、多くのスタートアップ企業が集積し、日本貿易振興機構(ジェトロ)が16年にまとめた経済概況では、「山寨(模倣品)の街を経て、ハードウェア系スタートアップ/ベンチャーの中心地」に位置づけられた。
 

IoT向けで支援企業の規模に変化


 企業を支援するなかで、同社が最近、注目しているのがIoT関係のニーズだ。蒋副総経理は「IoTに関しては、これまではアイデアだけで終わることが多かったが、今は具体的な形になるケースが増えている」とし、「IoTは適用範囲が広範囲にわたる。人々の生活をサポートする目的で、今後も利用は拡大していくだろう」と話す。
 
蒋宇副総経理

 製造業をはじめ、通信や農業など、幅広い分野を対象とした製品開発の要望に応えるため同社は17年、会員制の産業IoTハードウェアイノベーションラボ「x.factory」を深セン市内に開設し、事務所スペースの貸し出しや専門家による技術指導などを新たに始めた。
 
x.factoryのサービスメニュー

 同社が1年間に支援する企業数は200~300社。これまでは個人や数人のスタートアップ企業が多かったが、最近は、より専門的なIoTデバイスを手掛ける数十人規模の企業も増えているという。

 蒋副総経理は「以前、支援したスタートアップ企業が大きくなって戻ってくるケースもある。より大きな規模の会社を支援することで、われわれも一緒に成長できる好循環が生まれている」と分析する。
 

愛知県名古屋市に現地法人を設立


 同社は、中国だけでなく、米国にも拠点を所有し、世界中に代理店網を構築している。日本に関しては、17年に愛知県名古屋市に日本法人を設立した。蒋副総経理によると、現在、日本での事業は堅調に推移し、日本での売上高の伸び率は、欧州、米国に次いで3番目という。

 名古屋市を進出先として選んだのは、「製造業が多く集まり、われわれが力を入れるIoTの関係で企業の技術革新に役に立てると考えたからだ」と蒋副総経理。IoTに関する問い合わせは多く寄せられているといい、これからも「日本市場には力を入れる」と強調する。

 さらに、蒋宇副総経理は、20年度から日本国内の小学校でプログラミング教育が必修化されることにも着目しており、「今後、教育関係でも多くの案件が生まれることを期待している」と語る。

 ただ、日本で技術革新を起こすためには、意識改革も必要だと主張する。「日本には、世界的にレベルの高い技術がたくさんある」としつつ、「これからは、世界でどのような動きがあるかをしっかりと把握して、もっと開発や変化のスピードを上げる方向に力を入れていくこととが重要だ」と訴えている。