米デルテクノロジーズ(マイケル・デル会長兼CEO)は、プライベートイベント「Dell Technologies World 2018」を米ネバダ州ラスベガスで開催した。デルテクノロジーズグループ7社が参加し、各社の製品、サービスを組み合わせて顧客のトランスフォーメーションをサポートしていく、とした。グループ全体が進む方向、そして同社が起こそうとしている変革についてまとめる。(取材・文/山下彰子)

●グループ7社が集まるイベントは初

 
マイケル・デル会長
兼CEO
 「Dell Technologies World」は、現地時間の4月30日から5月2日の3日間開催。世界129か国から1万4000人が参加した。同社は例年、「Dell World」「EMC World」の名称でそれぞれの製品やソリューションを紹介するプライベートイベントを開催してきたが、2016年にデルがEMCを買収。翌17年には「Dell EMC World」に名称を変え、2社の製品、ソリューションを紹介した。

 今年はデル、EMCだけではなく、Pivotal、RSA、Secureworks、Virtustream、VMwareとデルテクノロジーズのグループ会社7社が参加。それぞれの製品、ソリューションを組み合わせて生まれたシナジーを紹介した。基調講演でマイケル・デル会長兼CEOは、「初めてのDell Technologies Worldの開催となる。テクノロジー、製品、ソリューションだけではなく、人類の進化を後押しするテクノロジー、よりよい未来のビジョンをユーザー、パートナーと共有したい」と話し、今後も全グループが参加するイベントとして続けていくとした。

 同社の今後のミッションとして掲げられたのが、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進とサポートだ。デル会長兼CEOは「顧客はDXを意識するようになっている。DXは、企業の成長を促し、新しいビジネスモデルをつくり、顧客との関係をつくる新たなサービスを生み出している。今や、単なるテクノロジー戦略ではなく、企業のビジネス戦略そのものになっている」と強調した。

 さらに、「今後企業が生き残るためには、AIとデータを使っていかなければならない。AIがロケットだとすると、データは燃料だ。もしかしたらアプリケーションよりもデータの価値が高まるかもしれない」とデル会長兼CEOは話した。

グループ全体でシナジーを起こし
顧客の四つの変革を支援


 デル会長兼CEOは、「企業は四つの変革が必要だ」と強調した。その四つの変革が、「デジタル変革」「IT変革」「ワークフォース変革」「セキュリティ変革」だ。デジタル変革にはVMwareやPivotal、IT変革にはEMCやVirtustream、ワークフォース変革にはデル、セキュリティ変革にはRSAやSecureWorksの製品、ソリューションを提供していく。

●デジタル変革のカギはIoT戦略

 デジタル変革は、デジタルを活用することで企業の成長を促し、新しいビジネスを創造し、顧客との関係性、結びつきを強くする。デル会長兼CEOが基調講演で話した通り、デジタル変革は企業の強大な競争力となる。この変革を実現するために必要なものがIoTとAI、そしてデータだ。

 デジタル変革の中核を担うIoT戦略はどういったものか。他社の場合、データをデータセンターに集め、そこで分析を行う集中化が主流だが、同社はセンサからデータを収集するエッジ、集めたデータを分析するコア、分析したデータの一部を収集し、さらなる分析を行うクラウドの3層構造を採用している。違いは、センサ側に分析を行うコアを配置している点だ。デル会長兼CEOは自動運転車を例に出して説明した。高速道路上での事故など、とっさの判断が必要なケースでは、データをクラウドに送り、その判断を待っていてはとても間に合わない。そのため、危険予測のAI/機械学習エンジンをエッジ側に実装し、短いレスポンスタイムで処理する必要がある。とはいえ、すべてエッジ側で分析が必要かといえばそうではない。長期にわたるマシンラーニングやディープラーニングはクラウドで行う。つまり、エッジ側に置いたコアで緊急性のある分析を行い、そこから抽出した必要なデータだけをクラウドに送り、マシンラーニング/ディープラーニングを行う。これにより膨大なデータすべてをクラウドに送らなくてもすむ。これをデル会長兼CEOは、「ディストリビューテッドコア(分散型コア)」と説明した。

●IT変革でモダンデータセンターを

 
サム・グロコット
シニアバイスプレジデント
インフラストラクチャー・
ソリューショングループ
マーケティング担当
 デジタル革命が進むと、IoTにより生成された膨大なデータを保存するためストレージが、またAIに最適なサーバーが必要になる。IT、つまりデータセンターのモダナイゼーションが求められる。モダンデータセンター構築のために、それにふさわしいサーバー、HCI、ストレージ、ネットワーク機器、データプロテクションなどが必要だ。今回、データセンターのモダナイズにフォーカスした新製品をリリースした。それがスケーラブルなオールフラッシュスアレイ「XtreamIO X2」、VMware環境を含むマルチクラウド対応のHCIアプライアンス「VxRail」などだ。なかでも同社がもっとも力を入れていたのがNVMeサポートのオールフラッシュアレイ「Dell EMC PowerMaxストレージ」だ。最大1000万IOPSの機能を備え、デュアルポートのNVMe、SCMレディに対応し、マルチプルアレイコントロールを搭載するなど、最新技術を余すところなく詰め込んだ。

 サム・グロコット・シニアバイスプレジデントは、「マシンラーニングの機能を搭載し、データをどこに置けばいいか、自動的に判断する。その判断は一日約60億回だ」と説明した。

●ワークフォースとセキュリティは同時に

 ワークフォース変革とは、いつでもどこからでも仕事ができるようにすること、つまりモバイルワークの支援だ。デルは4月に法人向けPCとして、小型化しながらもバッテリ寿命を10%高めた「Dell Latitude」や25周年を迎えた「Dell OptiPlex」をリリース。今回は新たにシンクライアント端末「Dell Wyse 5070」を発表した。

 
ジェラルディン・タンネル
シニアバイスプレジデント
コンシューマー・中小企業マーケティング担当
 Wyseシリーズはシンクライアント市場でNo.1の売り上げを誇っており、「唯一、エンドツーエンドのVDIソリューションを提供している」とジェラルディン・タンネル・シニアバイスプレジデントは強調する。特徴は仕様を変更することで1600通りの構成ができる点だ。タンネル・シニアバイスプレジデントは、「1製品でなぜ、これほど構成が必要なのか、疑問に思うでしょう。これまでお客様はさまざまな製品をいろいろなユースケースに合わせて導入する必要があった。それぞれに調整が必要になり、そのため、複雑性、そしてコストが増してしまった。私たちは、一つの製品でさまざまな構成を実現できるようにして、お客様がイノベーションを展開しやすい形で提供している」と説明した。

 ワークフォース変革にはしっかりしたセキュリティ対策が必要になる。その一つが、統合デジタルワークスペース プラットフォーム「VMware Workspace ONE」だ。デルのノートPCと組み合わせることで、PCの電源を入れ、立ち上げるだけで自動的にシングルサインオンがなされ、ユーザーは利用したいアプリケーションをすぐ利用できる。また、デバイスを問わず、複数のデバイスにまたがって利用できる。そのため、会社支給のデバイスだけではなく、個人所有のスマートフォンでも自動的にセキュリティ設定を行い、安全にアプリケーションにアクセスできる。

 この四つの変革の実行に必要不可欠なものは、やはりデータである。グループ全社のポートフォリオを持ち寄り、シナジーを起こすことで今後、データに対する適切なアプローチを行うことができるか注目したい。

統合の立役者に聞く
新会社の強みとは



 
Dell EMC
ハワード エライアス
サービス、デジタルIT担当
プレジデント
 EMCでCOOを務めたハワード・エライアス氏。デルとEMCの統合では、EMC側の責任者を務めた。現在は新会社デルテクノロジーズで、Dell EMCサービスおよびIT担当プレジデントとして、クライアント ソリューション グループとインフラストラクチャ ソリューション グループ全体の顧客をサポートしている。エライアス氏にデルとEMCの統合、そして現在の職務について聞いた。

──統合の進捗は予定通りに進みましたか?

 私はこれまでも大型のM&Aに携わったことがあります。そのなかでも今回、デルとEMCの統合は最大級のものでした。最初の1年は元デルだ、元EMCだという意識がありましたが、2年目はそんな意識もなくなり、新会社デルテクノロジーズだと思っています。17年末には統合は完璧に終了しました。

──日本ではデルとEMCの統合がまだ終わっていませんが。

 大きなグローバル企業である以上、それは仕方のないことです。企業の構造や地域ごとの事情があるからです。法人としては分かれていますが、運営面ではしっかり統合ができ、ワンカンパニーとして運営しています。

──2社が統合することで加速したことはありますか?

 ポートフォリオや顧客セグメントを補完することができました。具体的にはデルのPCやサーバー、EMCのストレージや仮想化技術、コンバージドインフラ/ハイパーコンバージドインフラ(HCI)の製品を、デル、EMCのお客様に提供することができるようになり、お客様の変革をより支援できるようになりました。

 2社が統合することで企業規模が大きくなり、R&D費は年間45億米ドルになり、約180か国に2万人以上のリセラーをもち、パートナーのエコシステムも強大になりました。

──統合により、サポートが充実したそうですね。

 統合1年目はサポートの形態を変えず、デルはデルの、EMCはEMCのそれぞれのやり方を継続しました。2年目はサポートチームを統合し、クロストレーニングを実施し、共通のツールを使うなど、共通のカスタマサポートができるようにしました。統合3年目の今年は統合したポートフォリオをよりシンプルにし、グローバルで統一して提供できるようにしました。プロダクトラインで統一して提供できるので、サーバーでもストレージでもHCIでもソフトウェアでも単一のサポート体系でサポートできます。

──現職のサービス、デジタルIT担当の役割を教えてください。

 サービスの領域はアドバイザリー、コンサルティングサービス、ピッキング・設置サービス、インプリメントサービス、マネージメントオペレーションサービス、メンテナンスなど、非常に幅広くなっています。

 なかでも急激に成長しているのがアドバイザリーとコンサルティングサービスです。つまり、ビジネスの要件とテクノロジーを組み合わせるところですね。

──その二つが伸びているのはなぜでしょうか。

 ITトランスフォーメーションとDXについて悩んでいるからですね。この二つは関連があり、つながっています。DXでテクノロジーやツールを変えるためには新しいアプリケーションの開発が必要になり、その開発にはモダンインフラとクラウドオペレーションモデル、つまりITトランスフォーメーションが必要になります。二つの変革を並行で進める顧客もいれば、一つずつ取り組む顧客もいます。ですがその両方が必要なので、進め方についてサポートしています。