日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は11月6日、長野県安曇野市のVAIO本社と工場の見学ツアーを実施した。同協会の大塚裕司会長をはじめ23名が参加。VAIOのものづくりの方針や工場設備などのレクチャーを受け、同社が国内生産で成功している理由などを学んだ。Windows 7の延長サポート終了が2020年1月に迫っていることから、PC市場への期待は大きくなってきている。ただ、単なるリプレースでは面白くない。このツアーには、生産現場を知ることで最適な提案につなげていきたいとの期待が込められている。(取材・文/畔上文昭)

VAIO工場見学ツアーに参加したJCSSA会員
 
工場見学前に新発売の「VAIO Pro PA」を確認

2in1モデルの生産ライン。写真中央でタブレット部分を生産

塵埃試験機。埃が舞う中での稼働テスト

電磁波ノイズを評価する3m法電波暗室
 
バンダイの『機動戦士ガンダム』AIロボット「ガンシュルジュ ハロ」の生産ライン
 

法人向けへの注力が原動力

 VAIOがソニーから分離・独立したのは14年。当初はほとんどが一般コンシューマー向けPCだったが、法人向けへの注力が原動力となり、独立2年目で営業黒字化を達成した。直近の17年度では2桁の増収増益と過去最高益を達成するなど、好調をキープ。それを支えているのは、PC事業の約7割を占めるようになった法人向けの売り上げである。

 同社が法人向けに注力するのは、技術力と品質がより生きる市場であるとの考えからだ。個人がPCを日常的に利用する機会は減っているが、ビジネスの現場では利用頻度が高い。それも壊れず快適に利用し続けられるPCが求められる。VAIOが注力するモバイルPC分野は、さらにその要求レベルが高くなる。同社は、こうした市場ニーズに応えてきたというわけだ。また、新幹線などの静かな場所での利用を考慮し、キーボードの打鍵感を維持しつつ、打鍵音を抑えるといった法人向けならではのこだわりも、ユーザーの支持を得るポイントとなっている。
 

企画から保守まで安曇野品質

 VAIOは、企画からアフターサービスまで、安曇野工場のワンストップ体制で対応している。国内で設計し、海外で製造するという体制では、試作や量産の段階で仕様の変更や追加などが発生しやすく、トータルではコスト高になりやすいとの判断である。

 VAIOではPC事業のほかに、ロボットなどの生産を担うEMS事業、VR(仮想現実)などを手掛けるソリューション事業を展開。これらの事業でもワンストップ体制のノウハウを生かし、国内での事業推進を実現している。

 ツアーでは、こうしたVAIOの取り組みの紹介を受け、工場内を見学。11月13日に発売を開始した2in1モデルの「VAIO Pro PA」や、バンダイのAIロボット「ガンシェルジュ ハロ」の生産ライン、試作機のテスト工程を担う機材などを視察し、VAIOのものづくりを学んだ。ツアーに参加したJCSSAの松波道廣専務理事は「細部まで、よく考えられている。法人向けのPCはコンスタントに使用するので耐久性が大事。試験の工程は、なるほどと感心させられた」と感想を語っていた。

 

“すり合わせ型ものづくり”を追求

 ワンストップ体制でものづくりに取り組むVAIOだが、中でも上流の設計プロセスに重点を置いている。上流がしっかりしていれば、その後のプロセスがスムーズに流れるためだ。VAIOの松山敏夫・執行役員常務は、「各プロセスのエンジニアやスタッフが一体となって、商品企画から参加する。これにより、量産に当たって考慮すべきポイントや製品のアピール方法などの準備を企画段階で進められる」と説明し、この取り組みを同社では“すり合わせ型ものづくり”と呼んでいる。
 
VAIOの松山敏夫・執行役員常務国内営業本部長。
持っているのは新発売の2in1モデルの「VAIO Pro PA」

 2in1モデルのVAIO Pro PAで採用した「Stabilizer Flap(スタビライザーフラップ)」は、そうした取り組みにおける成果の一つである。「2in1モデルは、タブレット部分が重いため、安定させるためにはキーボード部分を重くする必要があった。モバイル用途であるなら、軽くすべき。そこで、キーボードが軽くても安定するように、Stabilizer Flapを開発した」。2in1モデルながら、総重量は約1kg。すり合わせ型ものづくりで実現した製品だ。

 JCSSAのツアー参加者にはVAIO Pro PAに触れてもらい、意見を交換した。「機能だけでなく、手触りまで確認していただいた。当社にとってもいい機会になった」と松山常務。VAIOの工場を見学したいというオファーは、海外からも数多くきているという。そのため、工場見学のプログラム化も計画しているとのこと。「当社の妥協のないものづくりを見てもらいたい」と、松山常務は見学ツアーをビジネスパートナーの拡大に活用していく考えだ。