米レッドハットは5月7日から9日まで、ボストンで年次イベント「Red Hat Summit 2019」を開催した。ほとんど全てのITベンダーが「ハイブリッド/マルチクラウドの実現」を叫んでいるが、その中でレッドハットは「最も包括的」なソリューションを提供できると主張する。武器となるのは、業界標準になりつつあるコンテナ管理技術・Kubernetesをベースとしたプラットフォームの「OpenShift」と、オープンソースコミュニティから生まれる最先端のテクノロジーだ。(取材・文/日高 彰)
イベントでは20年ぶりのロゴ変更も発表され、帽子をかぶる“Shadowman”が消えた
主力のLinux製品
5年ぶりに刷新
レッドハットが主力開発拠点をおく米東海岸・ボストンで開催された今年のRed Hat Summitには、世界から過去最大となる8300人以上が出席した。日本からもパートナーや開発者など約130人が参加し、オープンソースやコンテナ技術の需要増に加え、IBMによる買収の決定で同社への関心がこれまでになく高まっている様子が見て取れた。
イベント開催に合わせて用意された最大の発表は、同社の主力商品である「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)の約5年ぶりとなるメジャーバージョンアップだ。
最新版の「RHEL 8」では、従来RHEL本体とは別に提供されていたシステム監視サービス「Red Hat Insights」が標準搭載される。オンプレミスからパブリッククラウドまで、全てのRHEL環境を常時モニタリングし、障害発生の予兆やセキュリティ上の危険を検知することができる。管理コンソールにはウェブブラウザからアクセスできるので、Linuxに慣れていない運用担当者も、コマンドラインに触れることなく管理が可能となっている。
AWS、Azure、グーグル・クラウドに展開可能なRHEL仮想マシンのイメージを簡単に作成できる「Image Builder」や、RHELをベースとした再配布可能なコンテナイメージの「Universal Base Image」なども目玉機能として発表された。いずれも、ハイブリッドクラウド/マルチクラウドを強く意識した機能となっており、特定のクラウドベンダーなどにロックインされることなく、アプリケーションを実行するインフラをユーザーが自由に選べる環境を実現しようとするものだ。
例えば昨年、アジア太平洋地域のSIパートナーを対象とした「OpenShift Practice Builder Program」を立ち上げた。パートナーが、OpenShiftを用いたクラウドネイティブな環境でのSIビジネスを立ち上げるにあたり、技術開発やトレーニング、マーケティングに必要なノウハウや資金をレッドハットが支援するというものだ。レッドハット日本法人のアンドリュー・ハブグッド パートナー・アライアンス営業統括本部長によると、国内でも今年10社程度がこのプログラムを活用する見込みだという。
IBMによるレッドハットの買収は今年中に完了する予定。次回のRed Hat Summitについて正式な案内は行われていなかったが、最終日の基調講演の中で、来年4月の開催がホワイトハーストCEOからアナウンスされた。IBM傘下となっても、独自のイベントとして継続することが強調された格好だ。OpenShiftがハイブリッド/マルチクラウド時代のスタンダードなプラットフォームとなるためには、レッドハットが中立を維持し続けることが至上命題となる。
米レッドハットは5月7日から9日まで、ボストンで年次イベント「Red Hat Summit 2019」を開催した。ほとんど全てのITベンダーが「ハイブリッド/マルチクラウドの実現」を叫んでいるが、その中でレッドハットは「最も包括的」なソリューションを提供できると主張する。武器となるのは、業界標準になりつつあるコンテナ管理技術・Kubernetesをベースとしたプラットフォームの「OpenShift」と、オープンソースコミュニティから生まれる最先端のテクノロジーだ。(取材・文/日高 彰)