週刊BCNは10月25日、福岡市で「SIer・リセラー必見!有力商材で広がるITビジネスセミナー」を開催した。全国にパートナー網を拡大したいソリューションベンダーと各地域のSIer・リセラーとのマッチングの場を提供する週刊BCNの全国キャラバン企画の一環だ。識者がIT市場のトレンドを解説するとともに、法人向けIT市場で成長中の注目ベンダーが、SIer・リセラー向けに自社の最新技術・商材やパートナープログラムを紹介した。

 基調講演には、IT産業ジャーナリストで一般社団法人ITビジネス研究会代表理事の田中克己氏が登壇。「SIビジネスの未来」と題して講演した。田中氏は「日本の“失われた30年間”の一つの大きな原因はIT革命の本質を見誤ったことであり、ITベンダーに大きな責任がある」と指摘。米国のグローバル大手ベンダーが日本市場でビジネスを大きく伸ばしている一方で、国産ベンダーが苦戦しているなど、新しいSIの形を模索する中堅・中小SIerの動向も紹介した。さらに、「トップダウンでビジネスモデルの転換をしやすい中小ベンダーこそ、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援のビジネスで大きく成長できる余地があり、みなさんの活躍が日本のIT産業、ひいては日本社会を良くできるかを左右する」と参加者に呼びかけた。
 
IT産業ジャーナリストで一般社団法人ITビジネス研究会代表理事の田中克己氏

 ソリューションベンダーセッションには4社が登壇した。NTTPCコミュニケーションズ 営業本部営業推進部営業推進担当課長の大野智史氏は「2019年、DXファースト期突入。数年後のレガシーシステム刷新を控え、今取り組むべきIT整備とは?」をテーマにプレゼンした。大野氏は、多くの企業が現行ビジネスの維持・運営に80%の人材を割いている現状を指摘し、「現行業務の効率化によるリソース確保がDXの実現には不可欠だ」と強調。その上で、「IT人材が一般的に担当する業務のうち、インフラ構築・運用・保守、サポート・ヘルスデスクをSD-WANにより効率化することで人材を新たに雇うことなく、DXを担う人的リソースを捻出することにつなげられる」とした。こうした市場の状況を受け、NTTPCコミュニケーションズのSD-WANサービスは中堅中小企業で導入が急速に進んでいるという。大野氏は「エントリVPNとSD-WANのいいとこどりで、フレッツに対応したゼロタッチプロビジョニングも実現している。料金体系もシンプルで、申し込みから故障交換まで日本語のコントロールパネルで完結できる」として、同社サービスの優れたユーザビリティーが支持を得ていることを強調した。
 
NTTPCコミュニケーションズ 営業本部営業推進部営業推進担当課長の大野智史氏

 ゾーホージャパン ManageEngine事業部ソリューションエバンジェリストの曽根禎行氏は、「市場が求むIT運用・セキュリティの基本ソリューション “ManageEngine”」と題して、同社のIT運用管理製品である「ManageEngine」の概要と販売戦略・パートナー戦略などを事前撮影済みの動画で解説した。ManageEngineはサーバー・ネットワークなどITインフラの管理やID・ログ・セキュリティ管理、ヘルプデスクソリューションまで幅広い製品をラインアップする。曽根氏は「ITの運用管理とセキュリティ対策をシンブルにし、コストと運用工数の削減を実現する」とメリットを説明し、ManageEngineが「SIerのビジネス拡大にも大きく貢献できる」とした。さらに、「顧客満足度が高く、パートナー向けのセールスツールやセールスサポートも充実しており、手離れもいい」と話し、パートナーにとっては売りやすい商材であることをアピールした。

 「中小企業市場における『V3 Security for Business』の展開とアンラボのパートナー戦略について」説明したのは、アンラボ 営業部アカウントマネージャーの宮本明氏。韓国発のセキュリティベンダーである同社は、韓国国内で65~70%のシェアをもち、金融機関におけるシェアに限ると8割まで上昇するという。宮本氏は「日本市場でも製品をOEM提供するなどして、66の金融機関で採用されている」と説明。「韓国が地理的にマルウェアが多くつくられている国と隣接していることから、多くの情報を収集・分析して製品力の向上に生かすことができている」とした。同社製品の特徴としては、エンドポイント、ネットワーク、管理コンソールを含め多機能であるにもかかわらず、管理の手間や導入・運用コストを抑えられることだという。日本市場では、「2022年12月末までに300社のパートナーエコシステムを構築し、3万社の法人顧客獲得を目指す」と目標を掲げ、参加者に協業を呼びかけた。
 
アンラボ 営業部アカウントマネージャーの宮本明氏

 バリオセキュア 営業本部営業部1グループプリセールスの篠原永年氏は「中小規模企業様向けに特化したセキュリティサービスと協業するパートナープログラムのご紹介」と題して講演した。同社は自社開発のUTM製品販売とUTM運用管理サービスを手掛けており、防御・検知・分析の仕組みや、アクセスログ、通信ログなどからサイバー攻撃を監視・検知する仕組みなど多層防御に必要な機能をオールインワンで提供する中小企業の情報セキュリティ対策に特化した製品「VCR」が主力だ。来年1月には新バージョンをリリース予定で、未知の脅威対策や情報漏えい防止などの機能が向上しているという。また、パートナーには同社の運用サービスのインフラを活用してもらい、ユーザーにUTMの運用管理サービスまで網羅したビジネスを手掛けてもらう体制も整えている。篠原氏は、「ランサムウエアや標的型攻撃は日本の中小企業にもターゲットを広げている」として、同社にとっては潜在的な顧客が増えていることを強調した。
 
バリオセキュア 営業本部営業部1グループプリセールスの篠原永年氏

 また、特別講演として地元・福岡市に本拠を置く福岡情報ビジネスセンター代表取締役の武藤元美氏が登壇し、「絶滅危惧種“SIer”の反撃~もう業者扱いはさせない!!DXを好機と捉え、不本意な現実をエコシステムで好転させる~」をテーマに、SIerのビジネスモデル変革の必要性を訴えた。DXが大きな潮流になる中、SIerにとっては「ユーザーにプロダクトオーナー意識を戻して、アジャイル開発やDevOpsなどを駆使してお客さんと一緒にシステムをつくっていくこと、さらには仲間のベンダーと協業し、互いの得意な領域を補完的に担当してスピーディーに案件を仕上げていくようなエコシステムの力を活用することが重要」と指摘。DXをテコに、SIerもユーザーも文化や振る舞いを変えるチャンスであると訴えた。
 
福岡情報ビジネスセンター代表取締役の武藤元美氏

 主催者講演では、週刊BCN編集長の本多和幸が、法人向けITビジネスの技術トレンドやビジネストレンドなどについて取材情報を基に解説した。