東京大学大学院新領域創成科学研究科、同マテリアルイノベーション研究センター、産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)の共同研究グループは12月17日、高性能な有機トランジスタに利用可能な有機半導体超薄膜をさまざまな表面にシールのように貼付する手法を開発したと発表した。

 有機半導体は、印刷法での製膜が可能であることから、低コストでの大量生産が可能な次世代の電子材料として期待されてきた。しかし、有機半導体薄膜を印刷法により製膜する際には、塗布下地の層として溶剤耐性や熱耐久性など、多くの性能が要求されていたため、実デバイスの作製にあたり制約が少なからず存在していた。
 

 今回、共同研究グループは、印刷法により製膜した有機半導体単結晶膜を水を用いて結晶性を維持したまま基板から剥離させ、厚さわずか分子数層分程度の厚みを有する超薄膜を作製することに成功した。この原理を用いることで、これまでの手法では印刷法と適合しなかった基板上に半導体膜を貼り付けることが可能となった。転写された半導体膜により作製された電界効果トランジスタは、平均の電荷の移動度として、実用化の指標となる10cm2/Vs以上を示すことを明らかにした。

 今回の手法では、従来では有機半導体塗布プロセスとの適合性の観点から実現が難しかった素子構造を簡便に作製可能となり、将来の産業応用に向けた高性能な有機半導体膜製造プロセスとしての利用が見込まれる。

 なお、この研究成果は、米国科学雑誌「Proceedings of theNational Academy of Sciences of the United States of America」19年12月16日版に掲載される。同研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金「単結晶有機半導体中電子伝導の巨大応力歪効果とフレキシブルメカノエレクトロニクス」「有機単結晶半導体を用いたスピントランジスタの実現」(研究者代表者:竹谷純一)、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(さきがけ)研究領域「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」研究課題「有機半導体の構造制御技術による革新的熱電材料の創製」の一環として行われた。