富士経済は、新型コロナウイルス感染症の流行により工場のIT化やデジタル化、自動化ニーズがさらに高まり、拡大が加速するスマートファクトリー関連システム・製品の世界市場を調査・分析し、その結果を「NEXT FACTORY関連市場の実態と将来展望 2020」としてまとめた。

スマートファクトリー関連システム・製品の世界市場

 今回の調査では、インテリジェント生産システム9品目、インテリジェントコントローラー・OS3品目、インテリジェント製造・搬送装置8品目、見える化・活人システム12品目、サービス8品目の市場を調査した。また、サブスクリプション、クラウドの活用比率や受託サービス、シェアリングに関連する市場の実態を捉え、FAシステムニーズの変化も明らかにした。

 スマートファクトリー関連システム・製品の世界市場は、製造業のIoT、自動化の進展を背景に市場規模を拡大してきた。19年は、米中貿易摩擦の影響から一部で設備投資を控える動きがあったが、IoTニーズの高まりから市場拡大を維持した。

 20年は前年比105.5%の2兆4142億円の見込み。新型コロナウイルス感染症が流行しているにもかかわらず市場は堅調である。インテリジェントコントローラー・OSとインテリジェント製造・搬送装置は縮小するものの、見える化・活人システムは新型コロナウイルス感染症の流行を契機に遠隔支援や無線化ニーズが増加し、施設・敷地内における無線通信ネットワークの専用基地局であるローカル5GやプライベートLTE、BtoB向けスマートグラス(AR/MR)を中心に大幅に拡大するとみられる。

 21年以降は、IT化やデジタル化、自動化ニーズがさらに高まるとみられ、新型コロナウイルス感染症の収束につれてIT関連投資や機器・装置などへの設備投資が再開することから、工場DX(デジタルトランスフォーメーション)に必要なスマートファクトリー関連システム・製品の市場拡大が期待される。

 注目市場として、製品設計から開発、アフターサポートまでの情報や人員情報などを相互に関連付けながら業務に応じ提供するシステムであるPDM(Product Data Management)/PLM(Product Lifecycle Management)市場では、設計、生産、保守を一体化した新たなモノづくりプロセスの構築や各部門間でのデータの連携・利活用を目的とした需要が増加している。20年は、前年からの継続案件が多いことや試験的に導入していた既存ユーザーを中心に他部門でも導入が進んでいることから市場は拡大するとみられる。21年はユーザーによるIT関連投資の見直し時期となり、22年以降は新規案件の本格的な立ち上がりが期待される。

 FAメーカーやITベンダーが提供するモノづくり向けのIoTプラットフォーム市場は、製造業でのIoTニーズの高まりを背景に、市場は拡大してきた。生産現場からのデータ収集・可視化に対する需要が増加しており、とくに海外では、データ収集・可視化の仕組みが構築できていないケースが多いため、需要の増加が顕著である。国内ではデータの収集・可視化とともにデータの分析・利活用へのニーズが高まり、導入が増えている。20年は、前年からの案件継続や既存ユーザーを中心に他部門でも導入が進み、市場は拡大するとみられる。新型コロナウイルス感染症の流行を契機に製造業でのIoTの重要性が再認識され、今後も市場は拡大していくとみられる。

 BtoB用途で使用されるAR、MRを活用したスマートグラス市場は、19年はRealWearが本格的な事業展開を開始し、欧州や北米を中心に導入が進んだ。20年は、新型コロナウイルス感染症の流行により人の移動が制限されていることで、遠隔からの指示を画面を通して的確に伝えられるスマートグラスの注目度が高まっている。遠隔支援ニーズの高まりを受けて、新規導入や実証実験からの本格導入が進み、とくに製造業や医療での採用が目立っている。一時的な特需にとどまることなく21年以降も市場拡大が期待される。

 製造業やエネルギー分野、運輸分野などのユーザー施設に設置し、敷地内で5Gによる無線通信ネットワークの利用を可能とする専用の基地局であるローカル5Gの市場では、各国でローカル5Gの周波数の割り当てや制度化が進められており、今後は新規に参入するサービス事業者が相次ぎ市場は拡大していくと予想される。

 海外ではプライベートLTEの導入が進んでいるが、大容量・超高速通信や超低遅延、多数同時接続といった点でLTEをはるかに上回るローカル5Gの市場が欧州、北米を中心に立ち上がっている。IoT活用によるデータの増大など、プライベートLTEでは対応しきれない課題を解決する手段としてニーズが高まっている。また、プライベートLTEからローカル5Gへの拡張は容易であることから移行するユーザーが今後増加するとみられる。20年から実証実験を含む導入が行われており、21年以降に普及が進むとみられる。

 FA分野やPA(プロセスオートメーション)分野の工場向けに提供されているパブリッククラウドをベースとしたPaaS、IaaS市場では、世界的な工場のIT化やデジタル化ニーズの高まりを受け、市場は拡大しており、プラント製造関連や自動車関連、電機・電子関連の大手企業を中心に導入が増加している。20年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、IT関連投資の縮小や凍結、見送りなどが生じているものの、製造業でのクラウドサービスの需要は増加しており、市場拡大が続くとみられる。21年以降も工場のIT化やデジタル化の進展にともなう需要増加、また、IT関連投資の回復により市場拡大は加速するとみられる。