米オラクルは米国時間の12月20日、医療ITシステム大手の米サーナーを買収すると発表した。買収総額は約283億米ドル(約3兆2000億円)で、オラクルは全額現金で支払うとしている。買収は2022年に完了する見込み。米国では、大手ITベンダーが医療領域への投資を拡大しており、オラクルは買収を同領域での主導権獲得につなげたい考えだ。
2019年の年次イベントで登壇する
米オラクルのラリー・エリソン会長兼CTO
オラクルのラリー・エリソン会長兼CTOは声明で「両社は、医療領域に変革をもたらす力を持っている」などとした上で、医療領域での事業の拡大を宣言した。今後の具体的な方向性については、ハンズフリーの音声インターフェース経由で情報にアクセスできる新しいデジタルツールを医療従事者に提供し、医療現場の負担軽減や医療費の削減などを目指す考えを示した。
オラクルは16年、ERPベンダーの米ネットスイートを約1兆円で買収しており、今回の買収総額はそれを上回る規模となる。オラクルのサフラ・キャッツCEOは「世界中のより多くの国にビジネスを広げることによって、サーナーはオラクルにとって巨大な収益成長のエンジンになるだろう」と予想し、「これはネットスイートを買収した時に採用した成長戦略と全く同じだ」と自信を見せた。
サーナーは、病院で使用するITシステムを提供している。電子カルテのほか、臨床の自動化などの領域で40年以上の実績があり、世界中の数千の施設で同社の技術が使われているという。同社のデイビット・フェインバーグCEOは今後、電子カルテの最新化などの面で「前例のない機会を提供できる」と期待した。
オラクルによると、20年の米国の医療市場は3兆8000億ドルの規模だった。この巨大な市場をめぐり、アマゾン・ドット・コムやマイクロソフト、グーグルなどの米国ベンダーは、企業買収や開発を進めており、今回の買収劇で各ベンダーの競争がより激化する可能性がある。(齋藤秀平)