長年、「日本オラクルの顔」とも言える活躍を見せてきた三澤智光氏が日本IBMに籍を移したのは2016年7月の こと。電撃的な移籍だったが、昨年12月に社長として日本オラクルに凱旋した。約4年の時を経て、日本法人の トップとして舵を取ることになった古巣の強みをどう整理し、どんな価値を市場に提供しようとしているのか。
日本のERP市場は
健全ではない
――米オラクルのシニア・バイス・プレジデントに就任してから約3カ月、日本オラクルの社長に就いてからは1カ月ですが、古巣ということで既にだいぶ馴染んだ感じでしょうか。
21年いましたからね。2016年に辞めた当時、頑張ってくれていたメンバーが引き続き前線にいるし、パートナーもお客様も、継続してお付き合いいただいている方が多いので、温かく迎えていただいていますね。
――あらためて日本オラクルに復帰した理由を聞かせてください。
正真正銘、社会基盤を支えていると言えるレベルで社会に貢献できているITベンダーって、外資系ではオラクルしかないんです。僕もいい年齢になってきてますから(笑)、IT業界にお世話になってきた中で、そういう仕事をしたいと考えたときに、選択肢はオラクルしかなかったんです。
――今のオラクルを率直にどう評価されていますか。
オラクルに再び入社して驚いたのは、日本での認知度と世界での認知度が全く違うということです。クラウド市場の中には、AWSやAzureなどIaaS中心のクラウドと、セールスフォース・ドットコム(SFDC)のようなSaaS中心のクラウドがありますが、SaaSベンダーとしてオラクルは世界最大規模になっていて、既にトップポジションにいます。米本社の株価も大きく上がっていて、本当のクラウドトランスフォーメーションができた会社だという評価を受けているということでしょう。
――ただ、三澤さんの言葉どおり、日本市場ではそこまで認知はされていない印象です。
確かに日本ではSaaSベンダーとしてのオラクルはまだまだです。ただ、一部先行しているお客様は、例えばSAPのようにオンプレミスのアーキテクチャーをIaaSに乗せて料金体系をサブスクリプションにしているのとは全く違うと理解してくれています。オラクルはピュアなSaaSなので、コストも安いしデリバリーも簡単だということで選んでくれるお客様がすごく増えています。このモメンタムを根拠に商売を楽観視している部分はあります。過去10年でオンプレのCRMはほぼSaaSになりましたよね。同様にこれからの10年で、日本でもバックオフィスのSaaS化が間違いなく進みます。
――SaaSのERPを核に、ミッションクリティカルなワークロードのクラウドシフトをリードしていこうということなんですね。
いまERP業界が健全かというと決してそうだとは思っていなくて、カスタマイズのお化けにしちゃった「SAP R/3」や「SAP ERP」のアップグレードで業界が沸騰してしまっているんです。そのための人的リソースも足りていない。変ですよね。アップグレードした先が本当に進化しているのか疑問ですし、なぜそこに多くのユーザーがお金をかけなければならないのか。それはオルタナティブがなかったからです。オラクルはそのオルタナティブとしての引き合いを相当頂戴している状況です。
――ただ、SAPの既存ユーザーも「SAP S/4HANA」へのアップグレードを選択している企業が多数派ではないでしょうか。
それは自然なことなんですが、大事なのは選択肢があることです。SAPと同じ価値ではなく、われわれはピュアSaaSという違う選択肢を用意している。S/4HANAのアーキテクチャーと比べて、ピュアSaaSならデリバリーコストが劇的に下がります。だからこそ日本のERP市場の健全化に一役買えると思っています。
[次のページ]圧倒的な強みと認知度のギャップを埋める