電子契約サービスを提供するサイトビジットは3月8日、これまで「NINJA SIGN by freee」として展開してきたサービス名を「freeeサイン」に変更した。同社は昨年4月にfreeeの子会社となっており、freeeグループのプロダクトであることをより明確にし、市場での存在感を高めていく。併せて、新たに個人事業主向けプランを開始し、従来のメインターゲットだった中小企業だけにとどまらず、スモールビジネスを手掛ける幅広いユーザーへの訴求をさらに図っていく考えだ。
(藤岡 堯)
鬼頭政人 代表取締役
サービス名変更と新プラン導入は、同日オンラインで開かれた、サイトビジットとして初となる戦略発表会で報告された。鬼頭政人代表取締役は新サービス名について「freeeグループの一員として、スモールビジネスに向けてサービスを(顧客に刺さるように)尖らせていくという強い意志の表れ」と気持ちを新たにした。
週刊BCNの取材に対しては「freeeと目指すビジョンの体現を、より直接的に伝えるという面と、(他のfreee製品との)クロスセルがしやすい、認知を得やすいといった実利面の両軸のタイミングがそろった」ことが変更の理由になったと語り、freeeとのID統合やクレジット課金機能が追加されたことも要因になったとした。その上で「スモールビジネスに価値提供を続けてきた『freee』という名前になることで、スモールビジネス向けの電子契約サービスであることが伝わりやすくなる」と期待を込めた。
名称変更に伴って、ロゴもリニューアルした。freeeグループの各サービスは、グループのシンボルであるツバメが、各サービスを象徴する物をくわえる姿をロゴに取り入れている。freeeサインでは、契約業務に欠かせない「署名・サイン」にちなみ、「万年筆」をくわえたデザインを採用した。
freeeサインのロゴ
今後の方針については、freeeグループが中長期に目指す統合型ERPサービスにおける法務部分を広く担っていくと強調。現時点では中小・零細企業や個人事業主に対する契約業務の前段階における書類作成やレビュー、審査などのサービスの市場は確立されていないとの認識を示した上で「われわれがスモールビジネスの法務マーケットをつくっていく。これを今後の大きな戦略にしたい」と訴えた。
スモールビジネスにおける法務の課題として、リソース不足や、法務知識のばらつき、顧問弁護士をはじめとする相談先の不在を指摘し、業務効率化や業務テンプレートの提供、サポート体制の充実によって解消に取り組むとした。freeeグループの他サービスとの連携もさらに広げ、多様な価値を提供していく姿勢も鮮明にした。
個人事業主向けの「スタータープラン」では、業務委託契約や秘密保持契約の書類、請求書、納品書などに関して、弁護士や専門家が監修したテンプレートを用意し、ひな形に沿って入力するだけで簡単に各種契約業務を行えるようにした。テンプレートは順次拡張していく予定だ。
料金は年額1万1760円(税別)で、実質月額は1000円以下と低料金に抑えた。料金内で、電子サインと、より信頼性が確保された形となる電子署名を月に10通まで送信できる。このほか、利用者が自身の印鑑を登録したり、オリジナル印鑑画像を作成できたりする機能なども備えている。
鬼頭代表取締役は新たに個人事業主向けのプランを打ち出すことについて「人、モノ、金のリソースがふんだんに使えないのは、中小企業もフリーランスも同じ。今後もよりフリーランスの方のお役に立てるサービスを拡充していきたい」と話した。