KDDIは7月29日、7月初めに発生した大規模通信障害を受け、3655万人(沖縄セルラー電話の利用者含む)に一律200円(税抜)を「お詫び」として返金すると発表した。通信障害期間中にスマートフォン、携帯電話、ホームプラス電話を契約していた全てのユーザーが対象となる。契約約款に基づく対応では、音声通話サービスのみを契約する278万人(同)に対し、基本使用料などの2日分相当額が返金される。沖縄セルラー電話分と合わせた返金総額は75億円で、KDDIでは過去最大規模となる。約款の返金対象には法人ユーザーも含まれるが、障害によって発生した損害への賠償は、今後、個別に協議する。29日の会見で高橋誠社長が説明した。
障害は2日午前1時35分から4日午後3時までの61時間25分にわたって発生。沖縄セルラー電話を含め、影響を受けた利用者は音声通話で2316万人以上、データ通信で775万人以上となった。
高橋 誠 社長
返金額は約款返金の1日あたりの平均額52円をベースとし、61時間という障害時間を勘案したほか、謝罪の意図も込めて決定した。約款返金の該当ユーザーもお詫び返金の対象となる。8月中旬以降に対象者が確定し、9月以降に請求額から差し引かれる形で返金される。法人向けの賠償の規模について高橋社長は「コメントは差し控える」と言及を避けた。
会見では、障害の原因も報告された。東京・多摩に設置されている全国中継網ルータのメンテナンス時に、本来は使用されない古いバージョンの手順書に基づいて作業した結果、ルータの通信経路に誤設定が生じ、一部の通信が遮断。これにより、音声通話に必要な端末の位置登録要求が大量に再送されたため、VoLTE交換機と加入者データベースの輻輳などが連鎖的に発生し、通信しにくい状況が続いたという。障害が大規模・長期化したことに関し、高橋社長は「輻輳制御を十分に考慮していなかった」点や「複雑な輻輳状況における復旧手順が確立されていなかった」ことを課題として挙げた。
現在、高橋社長を代表とする対策会議を発足し、再発防止策に取り組んでいる。作業手順書の管理ルールや作業承認手法の見直し、より詳細な輻輳検知ツールの開発、輻輳発生時の普及手順の見直しなどをすでに実施した。総務省との電気通信事故検証会議の議論も踏まえ、さらなる対策を実施する。
経営責任として、関連する役員9人が報酬を自主返納する方針も示された。高橋社長の返納額は20%、3カ月分となる。高橋社長は「社会インフラを支え、安定したサービスを提供しなければいけない通信事業者として、今回のような事象を発生させたことを重く受け止めている。再発防止策の徹底を図り、サービスの安定的な運用に向けて全力を挙げて取り組む」と謝罪した。
(藤岡 堯)