弁護士ドットコムは5月30日、記者会見を開き、電子契約ソリューション「クラウドサイン」事業の現状を説明した。2023年3月期のクラウドサインを主力とするIT・ソリューション事業の売上高は、前期比48.2%増の約46億円と大幅増となった。執行役員の小林誉幸・クラウドサイン戦略統括は「業界内でもトップクラスのシェアを誇っている」と話し、今後の事業戦略について、新たなサービスとして契約レビューへの進出を計画していることを明らかにした。
小林誉幸 執行役員
クラウドサイン事業の売上高は約42億円で、固定売り上げ、契約の送信件数ごとにかかる従量売り上げ、導入支援コンサルティングなどのスポット売り上げがいずれも成長を遂げた。とりわけ従量売り上げが好調に推移し、契約送信件数は604万件で、前期比約40%増加した。24年3月期は35%増の57億円を目指す。小林執行役員は「(クラウドサイン事業は)すでに黒字化しており、利益は増加していくだろう」との見通しを示した。
利用者の拡大に向けて小林執行役員は「電子契約は取引先が利用しているソリューションに合わせて導入するケースが多い。ネットワーク効果が顕著に現れるため、どのくらい使われているかの指標となる契約送信件数が増加していることが競合優位性になる」と話し、既存の顧客基盤を生かして新規顧客の増加を図る構えだ。
加えて、小林執行役員は「電子契約を導入する119の自治体のうち、96の自治体が(クラウドサインを)利用し、80%のシェアを誇る」と紹介した上で、「大企業や政府、自治体が電子契約を使うことで、取引先の中小企業の利用が推進される」とし、自治体からの波及効果を見込む。
今後に向けては、契約前後のプロセスを含めたソリューションを提供するビジネスモデルの実現を目指す考えを示した。現在提供する契約締結や契約書管理に加え、契約レビュー領域に進出する計画で、同社の電子契約を利用する顧客への提案を進めるとともに、新規顧客に対するクロスセル戦略を推進する。
小林執行役員は「契約レビューの領域は、先行プレイヤーが多いホットな領域だ。当社は後発となるが、リーガルテックを利用する際の入り口となる契約で、クラウドサインがトップシェアであることが強みになるだろう」と自信をみせた。
販売戦略に関しては「現在は基本的にはプロフェッショナルサービス部隊による直販がメインだが、(電子契約単体の導入よりも複雑になるため)パートナーやITコンサルとの協業も視野に入れている」と述べた。
(大畑直悠)