デジタル庁は自治体がSaaSを導入する際の調達専用ウェブサイト「デジタルマーケットプレイス(DMP)」の開設準備を進めている。ソフトウェアとその導入支援が調達対象で、自治体はサイト上で必要な機能を備えた製品や価格を簡単に比較検討できるようになる。現在、仮サイトでベンダーと販売会社の登録を行っており、1月末までに約180社が登録。2024年度後半に本サイトを運用開始予定だ。同庁は、自治体はスムーズな調達が可能になり、ベンダー側は自治体へ営業機会が拡大するなど、双方にメリットがあるとしている。
(堀 茜)
自治体のソフトフェア調達をめぐっては、調達手続きが煩雑で時間がかかるとの指摘がある。同庁によると、調達仕様書を公開し、入札を経ての調達先決定には、3カ月から半年程度を要する。この課題を解決するため、英国で14年から導入されている調達専用サイトの取り組みを参考に、日本市場に合うかたちを22年から検討会などで議論。SaaSと導入支援をセットで調達できるDMPを開設することとなった。
吉田泰己 企画官
DMPでは、ソフトウェアを提供しているベンダーは自社製品を、販売会社は導入支援の内容をそれぞれ登録できる。完了すると、DMP内の「カタログサイト」に掲載される。機能や政策テーマごとにタグが設定されるため、自治体は求める機能を提供している製品を簡単に検索できる。自治体は製品を選び、導入支援の内容を選択するというステップで調達先を絞り込む。価格も事前に登録されており、自治体が検索した内容は、公平性を担保するため保管される機能を付随。これまで必要だった入札手続きを経ることなく調達先を決定できるため、自治体は工数と期間を大幅に削減できる。同庁の吉田泰己・企画官は「調達期間を1カ月程度に短縮できる」とする。
もう一つのメリットは「市場にどんな製品があるのか、自治体担当者が容易に一覧できるようになる点」(吉田企画官)だ。自治体の中には付き合いのあるベンダーとしか接点がなかったり、SaaSで対応可能なシステムを個別開発したりといったケースもあるという。DMPの機能別検索で、幅広いSaaSの導入を推進する狙いだ。
また、同庁はベンダー側にも利点があると説明する。現状、ベンダーが自治体からの採用を目指す場合、各自治体がサイトなどで公募する情報を個別に検索し、入札するといった手順が必要で、中小やスタートアップといった営業体制が大きくない企業にはハードルが高い。DMPに登録することで、機能を必要とする全国各地の自治体からサイトを通じて引き合いがある可能性があり、幅広く営業機会を創出できると見込んでいる。
同庁は23年11月、ベンダーと販売会社が登録できる仮サイトをオープン。1月末までに約180社が登録した。2月末をめどに、登録済みの製品や導入支援の内容を検索できるサイトも開設予定で、自治体側、ベンダー側からのフィードバックを反映し、10月以降に本サイトの運用開始を予定している。開始時点でベンダーと販売会社合わせて数百社程度の登録を目指しており、同庁はベンダーらに登録を呼びかけている。吉田企画官は「自治体がより良い選択肢を検討できるプラットフォームとして機能させたい」と展望する。