NECと東京医科歯科大学は3月21日、スマートフォンやタブレット端末で撮影した映像や問診データをAIで解析し、骨格の推定や身体の部位ごとの状態評価、慢性腰痛の原因推定を自動で行う技術を開発したと発表した。慢性腰痛を抱える人が自分で腰の状態を確認したり、自分に合った運動で改善を図ったりできるよう支援する方針。
NEC
バイオメトリクス研究所
小阪勇気・主任研究員
開発したAI技術は、「2D/3D骨格推定技術」「姿勢状態認識技術」「仮説推論技術」の三つに分かれる。NECバイオメトリクス研究所の小阪勇気・主任研究員は「理学療法士レベルで診てもらえるAI技術を目指した」と説明した。
具体的には、2D/3D骨格推定技術では人物がカメラに映る角度をAIが考慮して骨格を推定する。スマートフォンで自分の身体を撮影する場合、従来は撮影した角度によって骨格が歪んで推定されることがあった。今回開発した技術により、撮影の角度にかかわらず高精度に骨格を推定可能になった。
姿勢状態認識技術は、体の部位同士の関係性の特徴だけでなく、部位と背中の形状の関係性から抽出した特徴も加味するため、より正確な姿勢状態を認識し、高い精度で部位ごとの状態を評価できるとした。
仮説推論技術では、理学療法士の知識を形式化し、部位ごとの状態や問診データから運動学的な原因を推定できる。年齢、性別、生活習慣や症状などの情報の膨大な組み合わせが発生するため、従来の技術では原因の探索に数時間を要していたところ、今回の技術では平均10秒以内で原因を推定可能だという。
三つの技術で推定をした後、端末上では慢性腰痛を改善するための運動プログラムが原因に応じてレコメンドされるようになっている。
クラウド型のサービスとして、自治体や、企業の健康保険組合、リハビリクリニックに提供することを想定している。提供開始時期は未定だが、NECと東京医科歯科大学が実証事業として展開している健康増進サービス「NECカラダケア」の神楽坂店などで、今後技術の実証を進める。将来的には、首や肩の不調にも技術の適用範囲を拡大していく。
(大向琴音)