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売り方・売り物を変えるNECの「コアDX事業」 共通基盤の活用で収益力を向上

2024/02/01 09:00

週刊BCN 2024年01月29日vol.2000掲載

 NECは、コンサルティング起点のアプローチとオファリング型の提供モデルにより顧客のDXを支援する、「コアDX事業」の拡大に力を入れている。同事業をけん引する執行役の吉崎敏文・Corporate EVP兼CDO(チーフデジタルオフィサー)は「NECの売り方と売り物を変える事業」と位置付け、DX共通基盤「NEC Digital Platform(NDP)」の活用により、既存の個別SIによるビジネスを極小化することで収益力の向上を目指す考えだ。今後はNDP上で同社が開発した生成AIの提供などに力を入れる。
(取材・文/大畑直悠)
 

“単金”から価値提供ベースへ転換

 NECのコアDX事業は、社内DXの知見やノウハウ、研究開発した技術などを組み合わせて、提供内容や提案方法を定型化した「オファリング」によって顧客のDXを支援する。「コアDX」という名称には、顧客のDXを支援するにあたり「中核となるサービス」との思いを込めており、同社が強みを生かして差別化できる領域としている。コンサルティングからデリバリーまでの一貫したアプローチや、グローバルのハイパースケーラーとのアライアンス、NDPの活用などが特徴となっている。

 2022年度実績では、コアDX事業の売上高は2401億円で、調整後営業利益率は1.6%だった。23年度は売上高2960億円、調整後営業利益率が6.8%となる見通しで、計画では25年度に売上高5700億円、調整後営業利益率13.2%を目指す。

 23年4月には、コアDX事業の推進を担う事業部門となるデジタルプラットフォームビジネスユニットを設立。NECが提供するあらゆるデジタル技術を結集し、全社横断組織として製品・サービスを企画・開発して提供する。

 吉崎CDOは、上流からのアプローチとオファリングによる売り方について、「これから求められるのはバリュープライシングだと考えている。上流から顧客に関われば、顧客のDXを支援する上で提供すべき本質的な価値が見えてくるため、そこに対して値段を付けてもらう。“単金”ベースではなく、価値提供ベースへと変えていくことが重要だ」と説明。コアDX事業は、NECのITサービス事業の変革を促すドライバーとして期待されている。

 今後の成長に向けた注力領域としては、▽付加価値の高いコンサルティング起点のビジネスの拡大▽DX共通基盤NDPを活用した個別のSIの極小化▽新規事業機会の創出―を挙げている。

 コンサル起点のビジネスでは、戦略構想策定から実装・定着・運用までを一貫して提供する。同社が保有する、デバイスやインフラ、アプリケーションの将来的なロードマップを見据えた上で、コンサルサービスを提供できることが強みだ。コンサル起点ビジネスの売上高は、22年度は1269億円で、23年度は1320億円になる見通し。25年度には1650億円を目指す。
 
吉崎敏文 CDO

 人的リソース面では、23年度に500人のDX戦略コンサルタントを25年度には1000人へ拡大させるとともに、グループ会社のアビームコンサルティングとの連携も図りながら、体制の強化に取り組む。吉崎CDOは「当社は要件に従って品質を担保するような中流の工程は以前から得意だったが、これからは上流のアプローチも必要になる。各顧客にスクラッチ開発して提供するモデルは効率が悪く、こちらから強いポートフォリオを押し出すアプローチを担う。当社のビジネスプロセスそのものを変えるために、設置した組織だ」と説明する。加えて、「顧客のDXを進める上で、構想策定の段階から関われば、課題やニーズを把握できる。上流と当社の研究所をつなぎ、それに応じて研究開発を進める」と話す。

 今後は、業種別に専門のコンサルタントを配置していく計画で、製造、流通、公共、金融といった各業界に特化した部隊を立ち上げる予定だ。

 新規事業の創出ではスマートシティとインフラ協調モビリティを挙げ、25年度の目標として、それぞれ333億円、433億円を掲げる。スマートシティでは、防災や医療・福祉、観光・移動、健康といった自治体からのニーズの高いサービスとデータ連携サービスを組み合わせ、デジタル田園都市構想で拡大する需要を捉える。現在60の自治体での導入実績を、25年度までに200自治体に拡大させる。インフラ協調モビリティでは、政府の総合整備計画と連動し、25年度以降の急拡大に向けて関連省庁主導のプロジェクトへの参画やリファレンスアーキテクチャーなどの提案を進める。
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  • SIの効率化で利益を追求
  • 生成AIを業界・業種別に展開

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