NTTデータグループは、6月18日付で国内事業会社NTTデータの佐々木裕社長がNTTデータグループ社長を兼務する役員人事を発表した。同日開催予定の株主総会で正式決定する。NTTデータグループ現社長の本間洋氏は同社相談役に就く。併せて海外事業会社のNTT DATA,Inc.の社長交代も発表し、同社のアビジット・ダビー・エグゼクティブ・バイス・プレジデントが6月6日付で社長に就任し、現任の西畑一宏社長はエグゼクティブアドバイザーになる。新体制では佐々木氏とダビー氏の二人三脚で国内外のビジネスを伸ばしていく。
(安藤章司)
本間洋社長(左)と佐々木裕次期社長
佐々木氏は5月10日の就任会見で、▽組織能力の継続的な向上▽M&Aなど戦略的な投資▽NTTグループの総合力の発揮―の3点を重視する方針を示した。
組織能力の継続的な向上では「顧客の事業変革や社会の変化に能動的に対応できる組織づくり」を推進。顧客が求める仕様に基づく従来型のSIビジネスに加え、顧客や社会とともに新しい価値をつくり出せる体制を整える。実現に当たってはコンサルティング力や技術力をグローバル規模で一層高めていくことが必要とした。
戦略的な投資では、組織能力を高めたり、人材確保を目的としたりするM&Aや、データセンターの強化を世界規模で行う。国内のM&Aについては、2025年度までに1000億円規模の予算を組んでおり、直近では年商約200億円の準大手SIerジャステックの株式公開買付けの実施や、Salesforce事業の強化を目的にテラスカイとの資本業務提携を行っている。
NTTグループの総合力の発揮では次世代光通信基盤「IOWN」や、NTT独自の大規模言語モデル「tsuzumi」など大型商材を活用したビジネスを国内外で強化することを念頭に置く。
佐々木氏は、持ち株会社と国内事業会社のトップを兼務することになり、名目上は国内と海外の両方を見る立場となるが、海外事業についてはダビー氏に実質的に担ってもらう「二人三脚の体制」(佐々木氏)で臨む。ダビー氏とは25年度までの4カ年中期経営計画をともに策定した経緯があり、「課題認識や経営の方向性は一致しており、あとは新体制で実行していくのみ」といい、念入りな意思疎通を積み重ねてきたと語った。中計最終年度にNTTデータグループの連結売上高を足元の4.3兆円から4.7兆円に伸ばす目標を掲げている。
課題認識に関して、国内ではIT人材が慢性的に逼迫する状況が続いていることを挙げる。国内IT投資は今後も底堅く推移するとみられ、人材育成やM&Aによる人材確保を継続する。海外については、国や地域ごとに特色あるビジネスを展開できるよう人材育成に取り組む。
18年から6年にわたってNTTデータグループを率いてきた本間洋社長は「2%台だった海外事業のEBITA率を昨年度(24年3月期)は6.3%に拡大、海外売上高は1兆円規模から2.6兆円規模へと伸ばすことができた」と任期中に海外事業において質を伴った成長を実現できたと話した。
NTTの島田明社長は、5月10日の決算説明会でNTTデータグループ、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズの3事業会社の新トップ人事について、全員が50代に若返ったことを踏まえ「新しい世代の経営者に次の戦略をけん引していってもらいたい」とコメントした。