インテルは6月10日、AI活用をテーマにメディア向けセミナーを開催した。6月1日に就任した大野誠社長は、「クラウドとエッジの両方を活用するハイブリッドなAIの世界観が広がっていくだろう」と展望。データセンター(DC)からPC向けまで幅広いポートフォリオの製品提供とソフトウェア開発の両面でAIの進化を推進する考えを示した。
大野 誠 社長
同社のAIに対する姿勢として、大野社長は「エッジからDC、クラウドまであらゆるプラットフォームですべての技術者、ユーザーが安心して使えるようにする」と説明。AIに特化した多様な製品を提供し、ソフトウェアの開発も支援しているとした。
また、推論処理について「クラウド処理がなくなるわけではないが、ユーザーに近いパーソナルデバイスに移行していく」との見方を示し、レイテンシーの少なさ、データのプライバシーを守れる点を利点として挙げた。AI処理に対応するプロセッサー「Core Ultra」を搭載したPCがすでに800万台出荷されており、2024年末までに4000万台が出荷見込みであることに触れ「PCをクラウドにつなげてAI処理をしたくないという要望に応えていく」と述べた。
AI処理対応のPC向けプロセッサーは、次世代製品の「Lunar Lake」(開発コードネーム)を24年秋ごろに市場投入する予定。前世代に比べNPUの性能が4倍になり、消費電力も抑えられる設計になるとして「Lunar Lakeの登場を楽しみにしてほしい」とAI PCの普及に自信を見せた。
セミナーでは、同社が調査会社のIDC Japanに依頼した、日本を含むアジア太平洋地域のAI成熟度実態調査の結果も紹介した。調査によると、対象8カ国の中でAI関連の支出は日本が最大で、年間30%の伸びが見込まれ、28年には2兆5000億円の市場になる見通し。AIに関する政府の政策が追い風になり、市場が拡大していくと予想した。現時点でAI活用が最も進んでいるのはシンガポールで、日本は2番目と分析した。
(堀 茜)