情報サービス産業協会(JISA)の福永哲弥会長(SCSK参与シニアフェロー)は、7月3日の年度事業説明会で、IT技術者の価値を高める活動に力を入れる方針を示した。先進技術を活用したデジタル化需要に応える高度デジタル人材(ITアスリート)を数百人規模で育成する昨年度からのプログラムを継続するとともに、より難易度の高い社会課題に取り組む「トップITアスリート」の育成では、群馬県の協力を得て現地で実地研修を行う。実地研修は「JISA版NTC(ナショナルトレーニングセンター)プロジェクト」の名称で、今年で3回目となる。
福永哲弥 会長
IT技術者の価値を高めるに当たっては、元請けSIerなどの発注者がIT技術者の価値を認めて、それに見合った支払いを行うことや、ユーザー企業が先端技術を駆使してビジネス変革を行う実行役として価値を発揮し、なくてはならない存在になることでより高い報酬を得るなど、IT技術者のあり方を変えていくとした。加えて、福永会長は「IT技術者が自身のキャリアアップにつながる事業ポートフォリオを持つ職場を能動的に選んでいくことも大切」と持論を語った。
情報サービス業界では、客先常駐の勤務形態や人月単価で報酬を決める商慣習が定着している。客先常駐は、ユーザー企業の業務現場にいることと同義であり、デジタル変革に積極的に参加できる立ち位置にある。「働き方次第で人月60万円の仕事を200~300万円の価値にすることも可能。一方で人月60万円の仕事のままでは、いずれAIに取って代わられることも考えられる」(福永会長)と、先進技術を社会実装する主導的立場になる必要性を訴えた。
また、JISAでは6月17日付で会員向けにIT技術者の報酬アップを促す働きかけを行い、自主行動計画をとりまとめている。JISAの調べによれば、JISA会員の本年度の報酬アップ率は平均5%台を見込んでいるという。
(安藤章司)