内田洋行は11月21日、横浜市内の公立の小・中学校の児童・生徒約26万人から得るビッグデータを活用する取り組みとして、横浜市立大学の医療に関する専門的な知見を生かしたデータ分析で適切なケアにつなげる「横浜モデル」を支援する方針を示した。従来の学習に関するデータ活用だけではなく、心身の状態に関するデータを収集し可視化するITシステムを整備する。同日に開催した横浜市教育委員会と横浜市立大学の同取り組みに関する共同研究契約の締結式で説明した。
具体的には、内田洋行が提供する学習eポータル「L-Gate」を利用して開発した教育データ活用基盤「横浜St☆dy Navi」で、児童・生徒にアンケートを定期的に実施し回答を集積する。これを受け取った横浜市立大学の公認心理師や児童精神科医、看護師・保健師が専門的な知見を基に分析し学校と共有。児童相談所といった関係機関と連携して、場合によって児童・生徒に精神科への早期受診を促すなどして課題に対処する仕組みを構築する。
約26万人規模の児童・生徒の教育データ活用は全国で最大規模の事例で、心身の変化を捉え、不調の軽減を目指すデータ活用のプロジェクトは国内としては初の試みになるとしている。今後はAIを活用したチャット相談機能を開発する計画。メタバース空間上でアバターを活用した対話を可能にする外部ベンダーのソリューションと協調して、「リアル」「オンライン」「バーチャル」の三つの空間を横浜St☆dy Navi上でつなぎ、場所を問わない児童・生徒への支援を提供するとした。
武田考正 部長
内田洋行のシステムズエンジニアリング事業部ネットワーク技術推進センターの武田考正・部長は「当社の役割はさまざまな機関が必要なデータを分析し活用可能にするためにデータを収集する経路を整備すること」と説明。横浜市教育委員会を支援するほかのITベンダーが提供するツールで収集したデータを統合するハブの役割を横浜St☆dy Naviが担うとして、横浜市の教育DXを支える基盤としたい考えだ。
横浜市教育委員会は11月22日、まずは横浜モデルのプロトタイプとして市内の小中学校各1校で試行を開始した。内田洋行は横浜St☆dy Naviに機能を追加し、児童・生徒が入力した心の状態の変化を記録する「こころの温度計」と毎月20問程度の質問で幸福度や抑うつ状態を把握する「こころの定期検診」を提供した。2025年1月末までの試行期間で、市内全ての市立学校への展開に向けた具体的な課題を洗い出す。
(大畑直悠)