リコージャパンは独自の業務アプリケーションの品ぞろえの拡充を急ぐとともに、提案や販売を担う人材育成に力を入れる。独自アプリではタレントマネジメント「RICOH人財ポータルサービス」を2025年1月をめどに提供を始めるなど、「当社独自の業務アプリの開発を推し進める」(宮本裕嗣・取締役常務執行役員デジタルサービス企画本部長)考え。人材育成ではAIエバンジェリストやバックオフィス、セキュリティーのスペシャリスト育成を本年度から本格的にスタートさせている。
(安藤章司)
独自の業務アプリの開発では、社内外の製品との連携を重視しており、「RICOH人財ポータルサービス」は、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、応研、OSKなど7社の業務ソフトベンダーと協業し、各ソフトウェア内に格納されている勤怠や給与といった人事マスターデータを参照してタレントマネジメントを行えるようにする。リコーグループ共通基盤プラットフォーム「RICOH Smart Integration(RSI)」を活用し、他社製品とデータ連携しやすいアーキテクチャーを採用する。
宮本裕嗣 常務
RSI基盤上での連携を巡っては、サイボウズと共同開発したローコード開発の「RICOH kintone plus」や、Okta JapanのID管理、シングルサインオンとの連携などで実績を積んできた。「RSIを活用することでデータ連携が容易になり、ユーザー企業の生産性を高められる」(宮本常務)としている。
リコージャパンでは、自社のアプリと他社製品を組み合わせて、ユーザー企業の業務的な課題を解決するソリューション商材「スクラムシリーズ」を販売しており、本年度上期(24年4~9月)は中小企業向けのスクラムパッケージの売上高が前年同期比29%増、カスタマイズ可能なスクラムアセットは23%増と堅調に伸ばしている。スクラムシリーズを含むアプリケーションサービス事業全体では本年度通期で「1000億円を超える水準(前年度は984億円)」(同)を見込む。
スクラムシリーズの売り上げランキングを見ると、セキュリティー対策や働き方改革、バックオフィス系が上位を占める。セキュリティー商材では資本業務提携先のデジタルデータソリューションと協業して開発した「RICOH サイバーセキュリティパックインシデント対応サービス」が好調に推移しており、24年4~7月までの月間平均販売数が112本だったのに対して、8~10月は201本と販売ペースが加速。10月末時点で累計1286契約、約16億円の売り上げを達成している。
人材育成では本年度、▽AIエバンジェリスト▽バックオフィススペシャリスト▽セキュリティースペシャリスト―の3分野の専門的知見を身につける育成プログラムを立ち上げ、社内で公募を行ったところ、AIエバンジェリストに1387人、バックオフィスに370人、セキュリティーに237人の応募があった。
バックオフィスやセキュリティーは既にベンダー資格などを取得している人員が多いこともあって少なめの応募だが、新規分野となるAIエバンジェリストは応募者数が急増。外部の資格取得や社内講習、AI商材の販売、改善提案の実績などの成果要因を満たした社員を認定する予定で、来年度中に300人のAIエバンジェリストの創出を目標に据える。認定制度は毎年更新する仕組みで「常に最新の技術動向に追随できる人材を増やしていく」(同)構えだ。