リコージャパンは8月21日、主力のデジタルサービス体系「スクラムシリーズ」の本年度（2025年3月期）売上高が前年度と同様に30％程度伸びるとの見通しを示した。本年度下期からは、「Windows 10」の保守サポートが25年10月に終了することに伴うPCの更新需要が活発化するとみており、それに合わせて「AI活用や情報セキュリティーの強化、脱炭素の提案に力を入れる」（笠井徹社長執行役員CEO）ことでビジネスを加速させていく。
（安藤章司）
 
　デジタルサービス事業の一翼を担うAI関連商材では、中小企業と中堅・大手企業で提案方法を分ける。中小企業向けでは業務アプリケーションにAIを組み込む方式を主軸に据え、例えば業務改善プラットフォーム「RICOH kintone plus」にAIを組み込んで業務テンプレートを生成。マイクロソフトの認定資格者約800人を動員してAIコンパニオンの「Copilot for Microsoft 365」の活用を推進する。スクラムシリーズのほかの業務アプリにもAIを積極的に応用することで、業務の自動化、効率化の提案に力を入れる。

　中でも親会社のリコーがサイボウズとの資本業務提携に基づいて共同開発し、22年10月から国内販売を始めたRICOH kintone plusは、今年4～6月期は前年同期比約5倍の販売本数に達しており、「通期でも5倍かそれ以上の販売数を目指す」（宮本裕嗣・取締役常務執行役員デジタルサービス企画本部長）という。

　中堅・大手企業向けでは、リコーが独自に開発した大規模言語モデル（LLM）を活用するなどして、ユーザー企業と共に業務改革を推進する「伴走型サービス」を手厚くしていく。

　リコーは今春に130億パラメーターの日本語LLMを開発したのに続き、8月21日付で日英中の3言語に対応した700億パラメーターのLLMを発表。ユーザー企業固有のプライベートLLM環境も構築可能で、個人情報や機密業務を取り扱うニーズを取り込んでいく。「仕事のAI」のブランド名で伴走型のAI活用ビジネスを伸ばす。

　セキュリティーでは、端末やネットワークの保護に加え、事後対策なども提案。監視と初動対応を行う「RICOHサイバーセキュリティパック インシデント対応サービス」が、今年4月から4カ月間で昨年度通年の販売数の1.9倍に相当する448件に伸びた。

　同サービスはデジタルデータソリューション（DDS）が開発したDDH BOXを採用しており、販売増が見込めることを受けて今年5月にリコージャパンとDDSは資本業務提携を行っている。笠井社長は「営業体制を含めて両社が密に連携した」ことを伸びた要因に挙げる。

　また、自治体向けではデジタル庁が推進する自治体DX施策と歩調を合わせて、「紙やはんこ、電話をなくす仕組みや、窓口業務関連で（住民が窓口へ）行かない、書かない、並ばない仕組み」（花井厚・執行役員パブリックサービス本部本部長）を軸にデジタル化を支援する商材を提案していく。併せて民需、官需の両面で脱炭素の提案にも力を入れる。

　Windows 10の保守サポート期限に合わせてITシステムの更新機運が本年度下期以降に本格的に高まる見込みであることから、スクラムシリーズを中心にAI、セキュリティー、脱炭素の三つの軸で提案活動を積極的に展開する。