Sansanは5月26日、営業DXサービス「Sansan」上で「デジタル名刺ソリューション」の提供を開始した。名刺を交換した相手に、自身の「デジタル名刺」を自動でメール送信する仕組みで、これまでSansanが主軸としていた“受け取った名刺”の管理・活用から、“ユーザー自身が渡す名刺”によるビジネスチャンスの創出へと事業領域を広げ、名刺情報の新たな用途を提案する。同社は新ソリューションを通じて、デジタル名刺の普及を狙うとともに、Sansanの認知拡大につなげる考えで、同日開いた発表会で寺田親弘社長・CEO・CPOは「Sansan事業にとってパラダイムシフトになる製品」と話した。
(大畑直悠)
寺田親弘 社長・CEO・CPO
新ソリューションは、紙の名刺交換で受け取った名刺をSansanに登録後、その登録した相手に自身の名刺情報をメールで自動で送る「デジタル名刺メール」を中核機能とする。交換相手がシステム上で名刺情報を管理していない場合、紙の名刺の紛失や破棄によってユーザー側の名刺情報が失われるおそれがあったが、デジタルデータとして送ることで、受け取り側に名刺情報を残せる可能性が高まり、顧客との関係維持に役立つと同社はみる。
同社の調査によると、購買や調達の担当者622人のうち68.6%が社外の連絡先を名刺管理ソリューションではなくメールの履歴から探していた。デジタル名刺メールの導入によって、受け取り相手が、より容易に名刺情報を見つけ出せるようになり、機会損失の軽減につながると考えられる。効果的なユースケースとして、同社は展示会などでの名刺交換を通じて、見込み顧客を獲得する企業での導入を挙げる。同社が実際に使用したところ、デジタル名刺メールの開封率は50%で、900枚の名刺から5件の商談化につながった。寺田社長は「Sansanの営業DXサービスとしての世界観と合致した、収益の拡大に結びつくソリューションだ」と語る。
同社は従来、ユーザーが受け取った名刺の情報をデータベース化し、そのデータを起点に営業活動を効率化する方向性に基づいて機能拡張を進めてきた。今回の発表は、ユーザー側の名刺情報を収益につなげるという新たな領域へと拡張する試みであり、寺田社長は「渡した名刺の価値を最大化するソリューションだ」と位置付ける。
3月から先行案内を実施しており、不動産や広告、IT業界など50社への導入がすでに決まっている。中小企業を中心に導入が進んでいるとし、今後は大企業への販売を目指す。デジタル名刺メールの普及に伴い、現状はSansanを利用していないユーザーへの接触機会が増えると見込まれ、Sansan自体の新規顧客を獲得する呼び水になることも期待する。寺田社長は「デジタル名刺メールの送付を新しい名刺交換の文化にしたい。1万社のユーザー企業を持つSansanと同じ規模のインパクトを出せるビジネスにする」と意気込んだ。
デジタル名刺の情報はユーザー側で自由に編集でき、紙の名刺としての印刷にも対応する。二次元コードとして表示し、相手のSansanや、スマートフォンの電話帳に直接連絡先を登録してもらうこともできる。