週刊BCNは、各地のSIerやIT製品販売会社を対象に開催しているセミナーイベント「全国キャラバン」を今年も開催する。4月には2025年の皮切りとなる「週刊BCN 全国キャラバン2025 in 福岡」を、福岡商工会議所で開催。2回目は6月27日に大阪で開催し、以降全国の主要都市を巡回する予定だ。
4月18日の福岡会場では、基調講演にプロイノベーションの久原健司・代表が登壇し、「生成AIと企業の未来 ?競争力強化と業務効率化の鍵?」と題して企業がどのように生成を取り入れるべきか、具体的なユースケースを紹介した。久原代表はAIの開発・進化の歴史を振り返ったうえで、2020年代に急速に発展した生成AIについて、日本企業は世界の中でも活用度合いが遅れていることを指摘する。専門的なAIスキルを持つ従業員が少ないことが背景に挙げられるが、生成AIは「指示を明確にすること」で高い品質の出力を得られるとし、誰が読んでもわかる表現で命令や制約条件を入力することが活用の第一歩だと説明した。
プロイノベーション
久原健司
代表
一般企業では情報収集や資料作成などで活用が進んでいる生成AIだが、久原代表は次に実用的な使い方として普及の可能性が高いものとして、繰り返しタスクの自動化を挙げる。例えば、処理期限が過ぎている業務を担当者にリマインドしたり、メールの返信、見込み顧客へのアプローチなどに適用が可能。久原代表は「最初の一歩は面倒くさいことや、本当は今やらなきゃいけないけどできなかったことを見つけること」と話し、このようなタスクを生成AIに任せることで、限られた時間の中でより多くの仕事ができるようになると解説した。
続いて、パスロジの市場戦略部の阿部寛之・営業セクションリーダーが、「提案しやすい多要素認証のご紹介!その最新事例と導入戦略」と題して、同社が提供する多要素認証ソリューション「PassLogic」を紹介した。PassLogicは、Webブラウザーだけで利用できる独自の「マトリックス方式」の認証機能を提供する製品で、主要なクラウドサービスやWebアプリケーションの認証を強化できる。また、クラウドサービスを開発・提供する事業者が自社のサービスに組み込むことも可能だ。
パスロジ
阿部寛之
営業セクションリーダー
多要素認証による認証強化を目的としたソリューションはさまざまな方式が提案されているが、阿部営業セクションリーダーは、「スマートデバイスやハードウェアトークンを必要としないため、それらのデバイスが従業員に支給されていない組織や、大量のハードウェアの展開が難しい大企業も導入しやすい」と、同社製品の利点を説明。販売パートナーや、自社のサービスに組み込むソリューションパートナーを拡大し、国内企業のセキュリティーを高めていく方針を示した。
A10ネットワークスのビジネス開発本部の石塚健太郎・ソリューションアーキテクトは、「顧客と従業員のデジタル体験を最大化するA10のネットワークインフラ・セキュリティソリューション」のタイトルで、サービスや業務システムの利用体験を高めるため、同社のネットワークソリューションがどのように貢献できるかを説明した。A10ネットワークスはネットワーク越しに提供されアプリケーションの性能を向上させるADCと呼ばれる機器や、さまざまなネットワークセキュリティー製品を提供している。
A10ネットワークス
石塚健太郎
ソリューションアーキテクト
石塚ソリューションアーキテクトは、「クラウドサービスや社内システムの使いやすさを改善することで、生産性や顧客リテンションの向上につながる」と述べ、近年はアプリケーションがただ動作しているだけではなく、いつでも高速なレスポンスが得られ、しかもセキュアであることが求められていることを強調。同社製品は高度な負荷分散やアクセス制御の機能を提供しており、最近では、昨年末から今年頭にかけて発生したDDoS攻撃対策でも需要が高まっているという。大企業や自治体での導入が進んでおり、クラウドサービスの普及につれてさらなるニーズの拡大が期待できるとアピールした。
アクトのITビジネスソリューション本部ソリューション営業部の山内治朗・マネージャーは、「中小企業のお客様が続々と採用。検出率100%を誇る世界トップクラスのEDRのご紹介」と題し、同社が取り扱うEDRセキュリティー製品「SentinelOne」と、それに関連する運用サービスを説明した。山内マネージャーはSentinelOneを「世界的に有名で伸び盛りのEDR製品」と紹介し、国内でも製品の特長の認知が広がれば大きなビジネス成長が期待できるソリューションであるとした。
アクト
山内治朗
マネージャー
SentinelOneは、第三者機関の評価で他の著名EDR製品と同等以上の優れた検知性能が確認できているという。また、クラウドに依存せずオフラインでも稼働可能なAIエージェントを搭載し、不正プログラムが動作する前にその活動を止めることができる。アクトではSentinelOneとセキュリティー運用をセットにした「データお守り隊」サービスを提供しており、この導入にはIT導入補助金も利用可能。中小企業の顧客を持つITベンダーとの協業を拡大したい考えを示した。
今回のセミナーでは、福岡情報ビジネスセンターの取締役でDX担当役員を務める江口聡・CDXOを招き、「私たちSIerにDXは必要なのか?」をテーマとする特別講演も行われた。江口取締役は、生成AIの進化によりシステム開発の仕事は大幅に生産性が向上するとの見方を示す一方、「プログラミングの受託を主体としていたITベンダーは受注額が減り、SIビジネス自体を別の選択肢に変える必要が出てくるだろう」と指摘。大手ITベンダーはこれを見越してコンサルティング事業などを強化しているが、体力が限られる企業はユーザー企業と一体となってDXを推進する役割を担うことに活路を見いだせるのではないか、との考えを披露した。
福岡情報ビジネスセンター
江口聡
取締役
福岡情報ビジネスセンターでは、親会社のFbeiホールディングスが2022年に地元福岡で食品事業を展開するサンリッチを傘下に加え、現在は同社とともに食品流通や商品開発へのIT活用を推進しているという。江口取締役は、ITベンダーとユーザー企業という枠を超えたビジネスの融合が今後のITビジネスには求められるとの見方を示した。
週刊BCNの次回イベントは「週刊BCN 全国キャラバン 2025 in 大阪」として、6月27日に大阪市内のAP大阪茶屋町で開催される。