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日本マイクロソフト、AIトランスフォーメーション推進を加速 AI活用で競争力向上を支援
2025/09/25 09:00
週刊BCN 2025年09月22日vol.2076掲載
(取材・文/南雲亮平)

基調講演で執行役員常務の岡嵜禎・クラウド&AIソリューション事業本部長は、フロンティア組織を「社内や社会の課題解決に向けてAIトランスフォーメーションの推進」と説明。少子高齢化による労働人口減少が進む日本にとって、こうした組織の重要性が高まっていると強調した。
岡嵜常務は、フロンティア組織への道筋として三つのステップがあると説明。ステップ1は、人がAIアシスタント「Copilot」を使って業務を行う段階。ステップ2は、人がAIエージェントを管理し、出力の評価などを担う段階。ステップ3は、人とAIエージェントが同僚のように協調して働く段階としている。

現状では、「ステップ1の企業が最も多い。Copilotの本格導入が進んでおり、最近では数万件規模で導入が進んでいる。ステップ2は2024年後半から広がり始め、リスク検証を行いながら適用範囲を拡大する動きが見られる。ただ、ステップ3に到達した企業はまだなく、今後2~3年で増加する」(岡嵜常務)との見通しを示した。

変革への重要項目と支援
フロンティア組織への変革において、同社は次の四つの項目を重要視する。(1)CopilotやAIエージェントによる「従業員エクスペリエンスの強化」(2)生成AIを活用して顧客体験の差別化を図り、ビジネスを拡大する「顧客エンゲージメントの改革」(3)AIエージェント活用を前提とした業務改革を行う「ビジネスプロセスの再構築」(4)生成AIを組み込んだ新機軸のユーザー体験を生み出す「イノベーションの加速」─。これらの実現に向け、三つのアプローチで支援する。一つは「AIビジネスソリューション」。「Microsoft 365 Copilot」や「GitHub Copilot」など既存のAIアプリケーションを提供し、企業が迅速にAIの価値を体感できるようにする。例えば、「Copilot Chat」やリサーチャーエージェントを業務環境にシームレスに組み込むことで、「Excel」によるデータ分析やプレゼン資料作成など日常業務の効率化を図る。
二つめは「クラウド&AIビジネスプラットフォーム」。Azureを基盤に、エージェントやサービスをブロックのように組み合わせて独自のAIアプリを開発できる環境を提供する。
三つめは「セキュリティー」。生成AIを安全に活用するため、ゼロトラストを中心としたエンドツーエンドのソリューションを用意する。具体的には、「Entra ID」や「Microsoft Sentinel」などのセキュリティー基盤を活用し、安全・安心なAI活用環境の構築を支援する。特にマルチエージェント連携や他社クラウド基盤との接続における認証セキュリティーの標準化は重要な検討事項としており、オープンなかたちで標準開発を視野に入れている。
パートナーエコシステムの強化
AIトランスフォーメーション推進のかぎは「どの業務をAIエージェントに任せるか明確にすること」だと岡嵜常務は強調する。そのために、まずは導入コストの低い既存AIソリューションを使い、メリットが見つかれば、その業務で集中的に活用する、という手法を推奨する。さらに、「Power Platform」や「Copilot Studio」などローコード・ノーコードツールの展開やパートナー連携も強化し、少ないリソースで大きなリターンを得られるようにすることで、中小企業でもAIを導入しやすい環境の整備を進める。同社は過去2~3年でパートナーと進めてきたビジネス開発が順調に進化していると評価する。イベントでは、パートナー企業のヘッドウォータースが「Azure DevOps」を活用したAIエージェント開発の体験プログラム「HWS Agent Camp」を紹介。実用最小限のアプリ開発やユースケース検討、機能追加を通じて生成AI技術の活用・内製化を支援するとした。

「HWS Agent Camp」概要
パートナーエコシステムの拡大も継続する。25年7月には、専門知識を持つパートナーと連携し、PoC(概念実証)から本格導入までを支援する「Azure Accelerate」を開始。重要性やインパクトの大きいプロジェクトには同社が資金を提供する仕組みも設けた。
同社はAI活用が今後の競争力に大きく影響すると見ており、引き続きAI活用推進を通じて顧客企業やパートナー企業の価値創出を支援していく方針だ。

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