進化するECビジネス

<進化するECビジネス>インフォーマート 食材・食品をネットで仲介しフード業界を活性化

2002/01/07 16:18

週刊BCN 2002年01月07日vol.923掲載

 インフォーマート(村上勝照社長)は、フード業界専門のeマーケットプレイス「FOODS Info Mart(フーズインフォマート)」を1998年6月からサービス開始し、約2年半で会員企業は約4600社に達した。会員は売り手側が食品メーカーや農業経営者など、買い手側がレストランやスーパーなどで、大手・中小に限らず広く採用されている。同社ではフード業界全体を活性化させるため、今後も会員企業の拡大を狙う。昨年には、日本フードサービス協会や日本セルフ・サービス協会、店舗システム協会、大阪商工会議所などとの業務提携も果たした。



サービス開始は98年6月、フード業界初のECサイト

 フード業界では、インターネットを通じたeマーケットプレイスがにわかに注目を集めている。買い手は、居ながらにして多数の食材・食品を検索し、価格や新鮮度などを見比べながら取引を検討することができ、売り手も多くの企業に対し新規開拓が図れるというメリットがあるからだ。

 こうしたeマーケットプレイスは、ここ数年で拡大しつつある。なかでも、フード業界最大規模の企業間取引サイトとされているのがインフォマートが提供する「フーズインフォマート」だ。98年6月に約100社の会員企業でサービスを開始した。

 「フーズインフォマート」のシステム開発を担当する長濱修開発マネージャーは、「レストランやスーパーは、新鮮な食品・食材をいかに安く調達できるかを試行錯誤している。一方、食品メーカーや農業経営者は、新鮮な食品・食材をいかに多く流通できるかに注力している」と、フード業界においてeマーケットプレイスの重要性を強調する。

 「フーズインフォマート」は、開始後約2年半で会員企業が約4600社にまで達し、売り手と買い手双方の細かなニーズに応えるサイトとなっている。特徴は、売り手と買い手双方から提案ができること。売り手は、売りたい商品の情報を「商品カタログシステム」に登録することで、これを検索した買い手からサンプル請求や問い合わせ、見積もり依頼が入る。

 買い手は、購入したい商品の情報を「調達カタログシステム」に登録。売り手が調達情報への問い合わせや入札参加の売り込みを提示できる仕組みだ。それぞれの情報検索は、入会時に発行された会員専用のIDとパスワードで行う。

 また、“食へのこだわり”をもって生産された安全な農産物のネット調達、ネット販売ができる「農ぶらんど」コーナーを設けている。

 今まで一方通行だった顔の見えない既存流通から、顔の見える生産者から消費者へといった新しい流通が可能となり、農業経営者の会員数が増えたという。

 「農ぶらんど」では、「年間カレンダー調達システム」を提供。同システムは、「生鮮品取引システム」として、農産物の出荷時期をカレンダー形式で表示することにより年間調達ができる。買い手が農産物をマイカレンダーに登録することで、年間調達計画を立てることができ、生産者は販路拡大につなげられる仕組になっている。

 「フーズインフォマート」の利用料は、売り手が月額2万5000円、買い手が同5000円となっている。

サポート・物流・決済を重視、他社との業務提携を強化

 同社ではeマーケットプレイスを展開するにあたり、「会員企業へのサポート、商品の物流体制、決済が重要だ」としている。

 サポートでは、福岡市博多区に「カスタマーサポートセンター」を設置しており、直接電話で顧客ニーズの調査を行っている。買い手向けに、ネット調達や社内体制のコンサルティングを行う「BtoBコンサルティング事業部」や、売り手向けに商品カタログの作成やネット販売のコンサルティングを担当する「商品流通開発室」なども立ち上げている。

 物流では、「運ぶ荷が食材・食品であるということから、温度管理や取り扱い、時間指定、物量、頻度、地域条件などを考慮しなければならない」という。

 そこで、物流システムコンサルティングを手掛ける日本ロジファクトリと事業提携を結び、地域ごとの配送会社の紹介や、会員企業の物流コンサルティングなどといった、独自の物流サービスを提供している。今後は、新しい物流サービスを提供するために賛同物流企業を全国から募り、ネットワーク構築を行う計画だ。

 決済については、金融機関と提携し、買い手の与信を明確にすることで代金回収までの保証を可能にしている。売り手は、代金回収のリスク回避と与信調査にかかる時間・コストの削減につなげることができる。買い手は、サイト内での取引口座の一本化、事務処理コストの削減が図れる。三井住友銀行グループのクオークとの提携により、多額取引だけでなく、少額取引の決済も可能だ。

 長濱開発マネージャーは、「eマーケットプレイスを行ううえで、売り手企業で最も多かったニーズは、買い手会員に関する与信調査。買い手企業からは、いざ取引を始めようとすると、新規口座開設の必要から時間がかかり取引の機会を逃してしまうという声を聞いた。そのため、決済代行をサービスに追加した」と話す。決済代行サービスの利用取引高は、年間約1億円に達する規模だ。

 同社では、日本フードサービス協会や日本セルフ・サービス協会、店舗システム協会、大阪商工会議所などの業界団体と相次ぎ提携し、これを弾みにさらなる会員増を狙う。

 将来的には、「フード業界の新しい流通ルートとして、業界全体の活性化を促す」ことが目標だ。

 まずは、02年中に約1万社の会員企業獲得を目指していく。

COMPANY DATA
インフォマート

 1998年2月13日に設立。資本金は4億8975万円、従業員は55人。「フーズインフォマート」の企画・開発スタッフは約10人となっている。

 98年6月に日本初となるフード業界専門の企業間取引サイト「フーズインフォマート」を立ち上げる。サイトでは食材・食品に関する販売、調達が可能。サイト上での受発注やサポート、決済代行、物流サービスなどが充実しているのが特徴だ。

 会員数は約4600社に達しており、売り手が約2200社、買い手が約2400社となっている。大手食品メーカーからレストラン、スーパー、農業経営者など幅広い会員を擁する。

 他業種との提携によるサービスの拡大、業界団体との提携を積極的に行っており、業界最大規模のeマーケットプレイス構築を目指す。
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外部リンク

http://www.infomart.co.jp/