医療情報システムのマルチベンダー化を実現する国際プロジェクト「IHE(Integrating the Healthcare Enterprise)」が、日本でも本格的に動き出した。経済産業省、厚生労働省、医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)の支援の下、日本画像医療システム工業会(JIRA)を事務局に、日本の受け皿機関となる「IHE-J」が発足。99年度から日本が独自に取り組んでいる「部門間データ交換システムプロジェクト」(事務局・MEDIS-DC)と協調していくことになり、昨年12月に第1回の合同委員会が開催された。「日本では医療機関の情報システムはNECと富士通の2社のシェアが圧倒的で、両社がそれぞれ独自の仕様でシステムを構築してきた。これからはシステムのマルチベンダー化を実現することで、システムのコストを下げていく必要がある」(東芝医用システム社複合画像ソリューション部医用システム開発主幹・篠田英範氏)。

 医療分野のIT化では、診療を行う医師の情報端末に電子カルテを表示できるだけでなく、各種検査や製剤などのオーダーを行ったり、検査結果や画像データを呼び出して表示したり、さまざまな機能が求められている。それを実現するには各医療情報システムの互換性、相互接続性と安全性を確保することが不可欠である。経済産業省主導による部門間データ交換システムプロジェクトがスタートしたちょうど同じ頃、米国でも同じ目的で北米放射線学会などが中心となったIHEプロジェクトが、2年間の準備期間を経て立ち上がっていた。医療分野では、実用的な医療情報の規格としてHL7、DICOMなどが開発され、国際標準として認知されつつある。

 IHEプロジェクトは、この医療情報の標準を利用して医療情報システムを構築する場合の互換性や相互接続性の確保をめざしている。日本の部門間データ交換システムプロジェクトでも、HL7などの標準をベースにシステム開発を進めていくことになっていたが、IHE-Jと協調することで日米欧が刺激し合いながら医療分野のIT化を推進することになったわけだ。「臨床現場での仕事の進め方や情報の利用の仕方は、国ごとに異なるので、システムそのものを標準化するわけではない」(篠田氏)。そこで重要になるのは、HL7やDICOMを実装するためのガイドラインに基づいて開発されたシステムを接続して試験を行い、“お墨付き”を与えるという作業。

 IHEでは、接続試験を行うイベントを「コネクタソン」と呼んでいる。大きな会場に各ベンダーが一斉にシステムをもち込んで、相互に接続実験を行って、その結果レポートを公表する仕組みである。米国でも、昨年10月に第1回のコネクタソンが実施されたばかり。欧州では、今年4月に開催される予定で、日本でも今年11月には第1回のコネクタソンを実施する方向で検討が進められている。JIRAでは、日本でのコネクタソンに先立って、IHEの成果を今年4月に神戸市で開催される「国際医療画像情報総合展」で公開することにした。

 実際の医療現場で想定されるケースでの情報のやり取りを、マルチベンダーシステムの上でデモンストレーションし、IHEの成果を実感してもらおうという試みだ。昨年12月、厚生労働省は「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」のなかで、医療情報システムの普及に向けた具体的な数値目標を正式決定した。2006年度までに電子カルテは全国400床以上の病院の6割以上、全診療所の6割以上に、レセプト電算処理システムは全国病院の7割以上に、それぞれ普及させる計画である。医療情報システムの導入本格化に向けて、IHEプロジェクトをはじめとする標準化活動も急ピッチで進み出したようだ。