「アイ・トゥー・ユー」

 エー・アイ・ソフトは、インターネット隆盛前から、ネットワークを生かしたソフト開発を手がけてきたソフトメーカー。パソコン通信を利用しているパワーユーザーの声を取り込んで開発したユーティリティソフトやFEPが、ユーザーの心を捉え、パッケージソフト市場で確固たる地位を築いた。

 その同社、「オンライン販売が急成長している」という。

 北沢昇社長によれば、「オンライン販売の大手ベクター経由での売り上げは、量販店の売り上げと肩を並べる規模になっている。昨年度と今年度を比較すると、10倍の成長だ」という。

 売り上げが厳しいとの声が多いソフト市場において、異例ともいえるほどの成長を遂げている。その要因はどこにあるのか。

 「実はネット上での販促の仕組みを変えた結果、売り上げが急増した」と北沢社長は笑顔で話す。

 ネット上の販促の仕組みとは、同社が行っているネットワーク上でのユーザーサービスがベースとなっている。

 同社が提供しているサイト「アイ・トゥー・ユー」(http://ai2you.com/)は、元々ASPサービスを行うことを目的にスタートした。だが、「ASPでは有償化が難しい」との判断から、パッケージを購入したユーザーへの支援と、自社ユーザーの囲い込みを行う「パッケージ購入者のためのCRMサイト」に変更した。

 このなかで行うサービスのうち、「PC診断士」は会員になる必要があるものの、無料で、ウェブブラウザから自分のパソコンのクリーン度チェックができる。

 この診断の結果、「よかったら、当社のソフトDiskX Toolsを使いませんかと、20社のオンラインショップ販売サイトを紹介している。オンライン販売を拡大するために、ユーザーにソフトを必要としてもらう仕組みを作って、ソフトの購入意欲を高めている」わけだ。

 この仕組みによって、DiskX Toolsはオンラインサイトで高い人気を集めている。

 「売り上げの3分の1がオンラインサイトによるもの。パワーユーザーが多いダウンロードサイトでは人気商品となった」

 同社の分析によれば、「オンラインでソフトを購入するユーザーは、圧倒的にパワーユーザーが多い。現在のパワーユーザーは、昔のパソコンユーザーに近いというのか、パソコンのことをよく知っている。また、お金がない学生さんが多いのか、タダで利用できるものがないかと探した結果、有料でもソフトを購入しようと決意して商品を購入するユーザーが多いようだ」と、熱心なパソコンユーザーの存在を指摘する。

 「現在のパソコンユーザーは、エントリーレベルのユーザーと、マニアックなパワーユーザーに二極化している。正直言って、エントリーレベルのユーザーにソフトを購入してもらうのは難しい。これに対して、パワーユーザーは商品を購入する意欲がある層」

 「オンライン販売に向いているソフトというものが存在すると思う。そんなソフトをきちんと販促していくことで、ユーザーが増加する」と北沢社長は言い切る。

 単にブロードバンドユーザーが増加したという外的要因だけでなく、ユーザーを増やす仕掛けをして、オンラインによる売り上げを増やしているのである。(三浦優子)