「あればいいなを押さえた」

 1993年、米国で誕生したマイクロジスティックスは、BTOパソコンが増加するなか、ユーザーに搭載するソフトを選択するサービスを提供している。いわば、ハードウェアにバンドルするソフトのOEM担当会社である。

 創業者が大学院でコンピュータを学んだ際、ウェブサイトを使って利用するソフトを選ぶサービスが成り立つのではないかと考えたのが発端。最初はゲートウェイと契約を結んだ。ゲートウェイでパソコンを購入したユーザーのみがアクセスできるサイトをつくり、リテール販売とは異なるパッケージで、しかもより安くソフトを手に入れられるようにした。従来はパソコンメーカーが直接ソフトメーカーに交渉していたことを、独立した別会社が行っているわけだ。

 現在では、こうしたパソコンへのOEMに加え、リテール向けビジネス、プロモーションビジネス、パブリッシングビジネスの4事業を展開している。

 このマイクロジスティックスが昨年、日本法人を設立した。米国、欧州に続く3番目の拠点である。阿部川久広社長は、「事業内容を説明するのが一番難しい」と笑う。

「サイトを使ってユーザーにソフトを選んでもらう」と説明すると、ドットコム企業に見られてしまう。「パソコンメーカーやリテールと連携をとっていることを考えれば、リアルビジネスなしには成り立たないわけで、バーチャルな世界で完結しているドットコム企業とは違う」と、バーチャルビジネスとは距離を置く。

 逆にソフトバンク・コマースなどの卸事業と競合するのではないかという点については、「一部分でコンペティターになるところはあるものの、完全な競合として捉えるのは誤り」だという。

 実際にリテールを支援するビジネスは、日本でもソフマップと提携し、ビジネスを開始することとなったが、米国でリテール支援をビジネスとすることになったのは、「米パソコン小売り大手のベストバイから、パソコンを購入した人がソフトを買わなくなっている実状をテコ入れして欲しいという要求から始まった」からだ。

 日本では3月4日からソフマップの主要店舗20店で、新品パソコンか中古パソコンの購入者が購入日に限り、低価格でパソコンソフトを手に入れられるサービスを開始する。

「ベストバイでこのサービスを実施した結果、顧客の売り場の滞留時間が増えたとのデータが出ている。低価格のソフト提供というと、店頭に並んでいるパッケージの売り上げを減らすことが目的と思われがちだが、実際はむしろ売り上げ的にはプラスに働いている」と、むしろ卸業者のビジネスを支援する側面があると強調する。

 これは、提供するソフトが古いバージョンであったり、利用日数限定であることもあって、「逆に最新のパッケージが欲しいという意識を高めることにつながる」からだ。

 流通にとっても、ソフトメーカーにとっても、持ち出しなしに新ビジネス開拓につながるビジネスモデルであり、日本のあるソフトメーカーからは、「あればいいなと思うことをすべて押さえている」という評価をもらったそうだ。

 だが、ユーザーに低価格で製品を提供していることもあって、マイクロジスティックス自身の利益はそう多くは確保できていない。

「売り上げは全世界で700-800億円。従業員も同じく全世界で130人とローコストオペレーションでビジネスを行っている」という。(三浦優子)