経済産業省が、ICカード社会の到来を見通して、2000年度補正予算でスタートした「ICカードの普及等によるIT装備都市研究事業」も、今年度はいよいよ第2フェーズに入る。5月上旬には、これまでの研究成果をベースに開始する「IT装備都市研究事業を基礎としたコミュニティ連携を推進するデータセンターに関する研究開発・実証事業」に関する公募を開始。事業に参加する地方自治体や民間企業などを選定し、活動がスタートすることになった。今回の新事業を紹介する前に、これまでの研究事業を振り返っておこう。

 「マルチアプリケーションICカードを使ってサービスを提供する場合、発行主体やサービスプロバイダの事情にもよるが、ICカードに行政サービスだけでなく、民間サービスを含めて複数のアプリケーションが載ることも想定される。マルチアプリケーション、マルチベンダーの利用環境において、ICカードは誰が発行し、誰がサービスを載せるのか。そうした役割分担や費用負担のあり方など検討すべき課題は多い」(経済産業省商務情報政策局情報政策課・石川勝一郎氏)。00年度補正予算で170億円を計上してスタートしたIT装備都市研究事業においては、同じICカードでも特定の行政サービスを利用するカードやJRの「スイカ」といった特定のアプリケーションを想定したものとは、位置づけが確かに異なっているようだ。

 ICカードを使って、どのような付加価値の高いサービスを提供できるのか。そのサービスを実現するにはどのような制度や仕組みが必要なのか。1枚のカードに、いくつぐらいのサービスを載せられるのか。使い勝手の良いサービスの組み合わせは何か。例えば、JRのスイカに、営団地下鉄や私鉄の磁気カード「パスネット」やバス共通カードなどのサービスも、いっしょに搭載されれば誰もが便利だと感じるだろう。そうしたマルチアプリケーションを実現するには、クリアすべき課題が多いというのが、経済産業省の問題意識だ。「昨年度の研究事業には、21の地域、54の地方自治体が参加した。研究開発者なども加えると、2000人以上の人が事業に関わった」

 今年1月からは、21の地域で実証実験も実施した。それぞれ各地域ではICカードに複数のサービスを搭載して、希望する住民に配布した。サービス数は、少ないところで3種類、大和市や岡山市では10種類以上のサービスを搭載。ICカード配布数も少ない地域で2万―3万枚、多いところでは10万枚を超えた。アプリケーションの種類も非常に多岐にわたっている。医療・介護、電子申請、証明書発行、図書館利用、地域通貨など幅広い。これらの研究成果は、今年秋ぐらいまでにまとめて、大々的に公表する予定だという。さて、今年度からスタートする事業は、ICカードを使ったサービスを実現するうえで必要なデータ処理機能を担う「コミュニティ・データセンター(CDC=仮称)」に関する研究だ。

 ICカードに行政・民間双方の複数のサービスが搭載された場合、行政、民間がそれぞれデータ処理をアウトソーシングするデータセンターも官民が共用できる方が効率的だろう。証明書の発行と利用料金の決済、といったアプリケーション間で連携が必要な場合も、データセンターが同じであれば実現しやすい。さらに、IT端末も、パソコン、携帯電話、ICカードなど多様化しており、携帯電話で自動販売機の商品を買えるようなサービスも始まっている。

 マルチ端末、マルチアプリケーションが進む中で、ひとつのサービスに対して、ひとつのデータセンターを作っていては明らかに非効率だ。データセンター間の相互連携による高度利用も視野に入れて、データセンターのあり方を研究していくことにしている。