WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第108回 米企業の重点予算配分

2002/06/10 16:04

週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載

売り上げ増進のITへ

 世界的経済低迷によって米企業IT予算の目的別割り振りにも01年からは大きな変化がみられる。

 従来米国でも、IT予算の大半は人員削減などの社内コストの低減を支援する従来的ITへの投資が多かった。

 しかし、01年には売上増進に寄与する在庫切れ機会損失を防ぐSCM(サプライチェーンマネジメント)、既存顧客を囲い込むCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)、顧客対応力均一化を促進するKM(ナレッジマネジメント)など売上増大に寄与する業務へのIT投資が大幅に増え始めた。

 米インフォワールドCTOネットワークの発表によると、01年米企業で、(1)IT予算の3分の1以上を従来のシステム、3分の1以下を売上増大ITへ配分した企業比率は42%、(2)予算の2分の1ずつを両業務に均等配分した比率は16%、そして(3)、3分の2以上を売上増大分へ、3分の1以下を従来ITへ配分した比率は42%に達し、58%の米企業は売上増大ITに半分以上のIT予算を注ぎ込んだ。

 さらにこれらの企業の31%は02年さらに売上増大に寄与するIT予算配分を増やす。

 これに対し従来IT向け予算を増やすと回答する企業は7%にとどまる。

 これらの調査は米企業CIO対象だ。まさにITは企業の経営ツールから脱し、経営資源になったことをこれらの数字は語る。

 さらに同調査では米CIOの44%はビジネスプロセスオートメーション(BPA)とストレージマネジメント(SM)強化が02年以降の米IT部門最大の課題だと回答している。

 これからはIBMなどの従量制料金のネットワークITアウトソーシング「ネットソーシング」の狙いと一致し、BPA、SMのネットソーシング需要が今後急増することを予告する。

 IBMは03年からわが国を含めて全世界で本格的サービスを開始するネットソーシングの「eビジネス・オン・デマンド」の2本柱として、ITインフラとビジネスプロセスのサービスをあげている。

 ガートナーは、全世界のBPMサービス市場は00年かの1500億ドル(20兆円)から、05年にはその2.3倍の3500億ドル(46兆円)に増大すると予測する。この市場は、年率19%の伸びとなる。

 ガートナーは「米企業はコスト削減、効率化を狙うのでBPAサービス市場が急伸する」と分析する。

 量販店世界一の売上高となったウォールマートのエレン・ハーニングCIOは、「価値ある社内IT投資を、これまでの社内機能不足部分の補完や欠陥部分の修復など後ろ向きの目的から、よりビジネスの損益に密着させる方向へシフトしなければならない。IT資源を従来目的からシフトできない多くの企業は市場から退出を強制されるだろう。われわれのIT部門は企業付加価値を高める役割へと全面的に転換しなければならない」と抱負を語る。

 IT資源のシフトはこれまでの購入から利用へIT活用形態シフトを示唆する。(中野英嗣●文)
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