パートナーとの連携強化によるサービス売上増

 IBMサム・パルミザーノ新CEOは、IBMの重点課題であるITサービス売上増をビジネスパートナーとの連携強化で実現しようとしている。同CEOはIBMとパートナーがビジネスチャンスと利益を共有するという経営理念のみがIBMの持続的成長を担保すると語る。次世代のITサービスでIBMの提唱するオンデマンド型でもパートナーとの協力で成功すると確信している。IBMは、パートナーとの絆を強くするには、パートナーがIBM商品専業になることを強く希望することを繰り返し述べている。

●パートナーとの間でチャンスと利益を共有

 サム・パルミザーノCEOは就任直後、IBMのシェア拡大とプレゼンス強化を担保するのは「IBMとパートナーがビジネスチャンスと利益を共有する」という基本理念だと述べた。こうしてパルミザーノCEOは自身の考え方としてパートナーとの連携強化が最優先戦略と強調した(Figure13)。

 さらにIBMパートナー戦略は不動・不変であり、IBMと一心同体の動きをするパートナーはIBMとともに発展できることをコミットしている。

 しかし一方で、同CEOは一心同体で動き、相互にこの意識を高めるにはパートナーが他社商品もIBMと併行的に取り扱うマルチベンダー方式を放棄して、IBM専業に転換することを強くパートナーに要請している。

 パルミザーノCEO最大の課題は、ルイス・ガースナー前CEO時代に果たせなかった売上高増大だ。この売上増大はハードの価格破壊が進むなか、当然ITサービスの伸長に依存しなければならない。このためパルミザーノCEOはパートナーとの連携強化を重点に、サービス売上増を推進する決意を述べている。

 同CEOは現在世界ITサービス市場でのIBMシェア8%を20%まで伸ばす決意を表明している。これをIBM自身で行うには現在15万5000人の自社サービス要員について、さらに10万人の要員増が必要だと同CEOは説明した。この採用は現実問題として不可能であり、IBMはこれをパートナーに依存することを決断したのだ(Figure14)。

 とくにパートナーとの協業によってIBMサービスの市場カバー率の低いSMB(中小企業)の市場開拓率を高めることをIBMは狙う。

●サービス拡販の製品販売を推奨

 IDCは、01年世界ITサービス市場はパルミザーノCEOの説明より大きい5520億ドルと発表している。その内訳は、ビジネスプロセス・アウトソーシング34.4%、ITアウトソーシング29.9%、ITソリューション・コンサルティング26.3%で、これら合計で全サービスの90%を占める。(Figure15)。

 この世界サービス市場のトップはIBM、第2位にサービス専業のEDS、これに続く3位グループはコンパックを合併した新HPと富士通である。

 とくに巨大な市場となるビジネスプロセスとITのアウトソーシングでのパートナーの役割が大きくなっている。アウトソーシング受託売上高で、アウトソーサー自身の直販比率は00年の28%から、05年には18%まで下がり、逆にアウトソーサーのパートナー経由の比率が同期間に70%から80%まで上昇する(Figure16)。

 従ってITサービス売上高増を狙うIBMにとって、パートナー経由の同分野売上増を計画するのは妥当な戦略と評価できるだろう。このためIBMは、パートナー経由のアウトソーシング受託増を狙う。しかしこれを実現するためIBMはパートナーに高額サービスビジネスが付帯する商品拡販を推奨する(Figure17)。

 パートナーのサービス受注が増えればパートナー自身の経営が安定し、さらにIT利用が自社導入からサービス事業者が準備するシェアドITの共同利用の方へと動けば、IBMのネットを介するアウトソーシング「ネットソーシング」利用のクライアント企業が増えるとIBMは考えている。IBMがこのような観点からパートナーに推奨する商品は、新メインフレーム「Z800」から、ローエンドサーバー、ストレージ、Linuxミドルウェア、ウェブサービス、さらにネットセキュリティ強化、データセンター破壊復旧ソリューションときわめて幅広い(Figure17)。

 IBMはLinuxを搭載してからゼロダウンサーバーのメインフレーム需要が高まり、メインフレームビジネスへの自信を深めている。このためローエンドの新メインフレームz800では世界的に80%程度をパートナー経由販売に依存したいとIBMは説明する。IBMはこれをメインフレームというより、ゼロダウンの巨大Linuxサーバーと位置づけ、この上でのITサービス拡販をパートナーに推奨する。IBMのサービス拡大を推進するのもLinuxだ。このためIBMはLinuxサーバーとLinuxミドルウェアを基盤にWeb Sphereベースのウェブサービスソリューション拡販を狙う。

●e-ビジネス・オン・デマンドを訴求

 IBMは、次世代アウトソーシングは水道、ガス、電話、電気に続く公共的ユーティリティサービスと位置づけている。料金も、使用するITインフラ量で決まる従量制料金のネットソーシングで、IBMはこれをe-ソーシングと呼ぶ。

 03年から全世界で本格的にサービスを開始する新しいアウトソーシングを「e-ビジネス・オン・デマンド」と名付け、わが国を含め全世界で積極的に訴求し始めた。このサービスにはITインフラのアウトソーシングだけでなく、電子商取引、電子調達などのビジネスプロセスのアウトソーシングおよび、これらに関するコンサルティングサービスが含まれる(Figure18)。

 ビジネスプロセスまでのアウトソーシングに企業が踏み切れれば、必要な時に必要なeビジネスをユーザーは初期投資なしに即刻展開できる。パートナー自身のITサービス売上高が増えれば、パートナーに貸すデータセンターのスペースも増大し、これが次のオンデマンドサービスの潜在需要になると考えているようだ。

 IBMのパルミザーノCEOはパートナー懇親会の席で次のように語っている。「販売するサーバー、ストレージが低額になると、付帯するITサービス金額も自動的に小さくなってしまう」

 同CEOはサービス売上高を伸ばすにはSMBにも高額なストレージ、サーバーなどを導入させることが必要と示唆している。このためIBMはインテルサーバーでも高額となる自社「エンタープライズX-アーキテクチャ」に基づく16-32ウェイまで拡張可能で一部に自動修復機能などの自律的コンピューティング機能を実装した高額サーバーを日米で発売した。低価格サーバーでの低額サービスに苦しむ国内SIerも多い筈である。