昨年3月に策定された「e-Japan重点計画」を受けて、昨年6月から開始した連載も第1章10回、第2章40回の計50回という長期連載となり、霞ヶ関の中央官庁の動きを中心にe-Japanの最新動向を紹介してきた。今月中にも「e-Japan重点計画-2002」が正式決定され、世界最先端のIT国家をめざして国、地方自治体、さらに民間で新たな取り組みがスタートする。改めて、これまでの状況を振り返ると、インターネットのブロードバンド化が急速に進み、通信料金も大幅に低下。政府が進めるe-Japanの成果は着実に出ているようにも思える。しかし、これが日本がめざしている「世界最先端のIT国家」の姿なのだろうか。この1年、e-Japanの取材を進めるほどに、ますます疑問は深まっている。

 現在、国会で審議中の郵政事業関連法案――。「民間参入を認める、認めない」で対立が続いているが、それ以前の問題として郵便事業そのものがe-Japanの進展で大きく影響を受ける可能性がある。電子メールの普及で郵便離れはますます加速していくだろうし、電子政府化によって行政機関が郵送している各種通知類も大幅に減少するだろう。郵便事業のあり方にe-Japanは大きく関係するはずだが、そのような議論はほとんど聞いたことがない。過疎地などでは、郵便配達員を一人雇う代わりに、インターネット端末を無料で配った方が割安かもしれない。そうした将来予測もないままに議論してみても、あまり意味がないのではないか。IT化を進めることで、何をどう変えていこうとしているのか。むしろ、明確なビジョンをもってe-Japanに取り組んでいるのは、霞ヶ関ではなく、先進的な地方自治体ではないだろうか。神奈川県横須賀市が導入した電子入札。昨年10月に電子入札を導入するに当たって、2年前から入札制度のあり方そのものの見直しを進め、電子入札の機能を生かすことができる条件付き一般競争入札制度を全面的に導入した。

 確かに、横須賀市のやり方に対して、建設業界内部や国土交通省からも賛否両論が出ているが、“談合”が蔓延する入札制度を変えようという意思は明確だ。同様に、神奈川県藤沢市が導入を進めている電子申請プロジェクト。ここでも、既存の紙による申請手続きの業務フローを全面的に見直し、簡素化を進める作業を同時並行で進めている。将来的には市役所の組織の見直しまで視野に入れているという。本来、電子政府化をめざす目的は、利用者の利便性向上はもちろん、行政手続の簡素化、さらには「小さな政府を実現する」ということに尽きる。税金を使って巨額のIT投資を行うからには、それに見合った効果が求められるのは当然のこと。藤沢市のような取り組みは当然のことだと考えられるが、永田町や霞ヶ関で、そんな議論はほとんど聞いたことがない。

 国土交通省が推進しているCALS/EC(公共事業支援システム)に対して、BCNの紙面でも業務改善につながっていない、と少々厳しく批評させていただいてきた。紙で入札するという行為だけを、インターネットを通じて電子的に行うというやり方に変えただけでは、国土交通省が電子入札を導入する目標としている「入札手続きの透明性向上」や「競争促進によるコスト縮減効果」など、とても期待できないと思うからである。今年3月、国土交通省でも、2004年度からスタートする予定の新しいCALS/ECのアクションプランの策定に向けて、IT化によって公共事業の業務をどのように見直していくかを本格的に検討していくことを決めた。確かに行政機関にとっても、自らを効率化、スリム化していくことは難しい課題ではあるが、その向こうに「世界最先端のIT国家」の姿が見えてくるのではないだろうか。(千葉利宏)