視点

シンピュータ

2002/07/15 16:41

週刊BCN 2002年07月15日vol.949掲載

 シンピュータが、とうとう発売になるらしい。低価格、小型、簡単操作を謳うシンピュータは、インド発の情報機器だ。外見は、320×240の白黒液晶を備えた、ペン操作のPDA。ただし、開発側に言わせれば、この道具は個人ではなく、コミュニティのためのもの。PDAならぬ、CDAであるという。開発プロジェクトの原点は、1998年にインドのバンガロールで開かれた、開発途上国のための情報技術国際セミナー「グローバル・ブレイン」だった。いわゆるデジタル・ディバイドを埋める、安価な情報機器の必要性が強調された。

 この課題にこたえようと、産学共同のシンピュータ・トラストが設立され、仕様の検討が始まった。目標は、量産時に9000インドルピア(約2万6000円)で売れるシステム。ただしこの値段は、開発途上国の庶民にとっては高すぎる。この壁を越える手段として打ち出されたのが、スマートカードの利用だった。個人がもつのはあくまでカード。本体は、コミュニティで共有しようという発想だ。インテルのStrong ARM CPUを用い、32MBのメモリを備え、Linuxベースで動く。モデム内蔵でインターネット接続可能。非営利組織のトラストが技術をライセンスし、製造販売はメーカーが行う。製品化近しとなってからしばらく間が空いたが、バンガロール発7月5日付のロイター電で、今月中の出荷を予測する記事が出た。これから関連したニュースが流れ始めるかも知れない。

 現状のシンピュータは、既存のPDAに決定的な差を付けているわけではない。ただし、低価格そのものを大目標とする姿勢、加えて、特定用途向けの一式をスマートカードにおさめ、「これだ!」と提供しようとする割り切りには興味がわいた。情報技術のネジ、クギにあたるような低廉なシステムに、ソリューションがのって届けられるスタイルは、面白いじゃないか。私には、「マイ・シンピュータ」の夢があった。白黒でいい。高度なことはできなくてもいいが、徹底的に安い電子本リーダーが、ずっと欲しかった。

 この願いに、試みは一歩近づいているように見える。さてあなたは、どんなシンピュータの夢を見る?
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