サイバーテロへの備え

<サイバーテロへの備え>第4回 ネットワーク社会の恐怖(サイバーテロって?(4))

2002/07/22 16:18

週刊BCN 2002年07月22日vol.950掲載

 2000年の初頭、わが国の政府機関に対するホームページの書き換えが多数発生したのを覚えておられるでしょうか。いわゆる南京大虐殺に絡む政治的な主張を述べたものが多数でしたが、歴史的な真実はさておき、ネットワークのセキュリティという観点から見ると、看過できない重要な問題です。

 ホームページの書き換えが可能であるということは、そのサーバー上のほかのファイルも書き換えることが可能です。さらにそのサーバー上のさまざまなデータを盗み見ることも可能であるということができます。つまり、それらの政府機関のサーバー群が、情報漏えいやほかのサーバーへの攻撃に悪用される可能性が十分にあったわけです。

 01年には、歴史教科書問題や首相の靖国参拝問題に絡んで、「サイバーデモ」といわれるアクセスの集中によるホームページ閲覧妨害が行われています。

 さらにいえば、わが国では03年度までに電子政府を実現するという「e-Japan計画」が進んでいますが、この受付窓口はやはりウェブによるものであると思われます。それらが機能しなくなるという影響は小さいものであるとは思えません。

 当然、わが国でも必要な対策をとるべく、内閣官房を中心にさまざまなプランを立てています。警察においてもサイバーテロ対策に必要な組織や人材、設備を整えているということは、先日報道された通りです。

 ただ、前回も書いたように、「一般の人のコンピュータがクラッカーに利用される可能性がある」ということ、あわせて「常時インターネットに接続されているコンピュータが急速に増加している」ことを考えると、わが国自身、かなり危険な状態にあるといわざるを得ないのが実情です。

 より不安なのは、インターネット常時接続環境の急速な低価格化により、「セキュリティ意識の低い初心者が容易にインターネットにつながり続けている」ということです。

 クラッカーから見れば、悪用し放題のコンピュータがインターネット上に急激に増えているということにほかなりません。

 このことについては後ほどまた触れたいと思います。次回からは「身近にあるハイテク犯罪」について、その現状と身を守る方法、必要な対策について述べたいと思います。(警察庁情報通信局技術対策課 課長補佐 野本靖之)
  • 1